「まだ降ってる……」

 窓の外をじっと見つめながら、愛美は呟いた。朝からずっと降り続いている雨は、今の愛美の心によく似ている。

(さやかちゃんはああ言ってくれたけど、ホントにおじさま、わたしに愛想尽かしてないのかな……?)

 こんな天気のせいだろうか? 愛美の心もすっきり晴れない。

 ――と、そこへ一人の看護師さんがやってきた。赤いリボンの掛けられた、やや大きめの真っ白な箱を抱えて。

「――相川さん。コレ、お見舞い。ついさっき届いたんだけど」

「……えっ? ありがとうございます……」

(お見舞い? 誰からだろ?)

 箱を受け取った愛美は、首を傾げながら箱に貼られた配達伝票を確かめる。――と、そこには信じられない名前があった。

「田中……太郎……」

 秘書の〝久留島栄吉〟の名前ではなく、〝あしながおじさん〟の仮の名前がそこには書かれている。しかも、直筆で。 

「送り主は、あなたの保護者の方?」

 先に名前を確かめたらしい看護師さんが、愛美に訊ねた。

「はい。――あの、開けてもいいですか?」

「ええ、もちろん。どうぞ」

 リボンをほどいて箱のフタを開けると、そこにビッシリ入っているのはピンク色のバラの花。

「フラワーボックスね。キレイ」

「はい……。あ、メッセージカード?」

 思わず感動を覚えた看護師さんに頷いた愛美は、バラの花の上に乗っている小ぶりな封筒に気づいた。
 
『相川愛美様    田中太郎』

 表書きの字は、伝票の字と同じで右下がりの変わった筆跡だ。

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『相川愛美様
 一日も早く、愛美さんの病状がよくなりますように。回復を祈っています。
           田中太郎より  』

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 二つ折りのメッセージカードには、これまた封筒の表書きと同じ筆跡でそれだけが書かれていた。

(おじさま、わたしの手紙、ちゃんと読んでくれてるんだ……)

 カードの文字を見つめていた愛美の目に、みるみるうちに涙が溢れてきた。