「さやかちゃん、……郵便受けには今日も何も?」

「うん、来てないよ。あれからもう四日経つよね。そろそろおじさまも、何かアクション起こしてもいい頃だと思うんだけど」

「そっか……」 

表情を曇らせて答えるさやかに、愛美はガックリと肩を落とす。

 ――愛美は医師の診察の結果、インフルエンザと診断された。入院してから数日は高熱が続き、おでこに冷却シートを貼られて点滴を打たれていた。
 四日前にやっと熱も下がってきて、起き上がっても大丈夫になったので、〝あしながおじさん〟に自分が今インフルエンザで入院中だということを手紙で書き送ったのである。前回、あんなひどい手紙を出してしまったことへの謝罪も兼ねて。
「あんなことを書いたのは、病気で神経が参っていたからだ」と。
 その手紙をさやかに出してきてもらい、もう四日。さやかの言う通り、そろそろ返事か愛美の容態(ようだい)を訊ねる手紙でも来ないとおかしいのに……。

「……わたし、おじさまにとうとう愛想尽かされちゃったかな」

「ん?」

 愛美がポツリと呟く。彼女はある可能性を否定できなかった。
 〝あしながおじさん〟はあの最悪の手紙に腹を立て、自分のことを見限ったんじゃないか、と。
 こんな失礼なことを書くような子には、もう援助する価値もないと。
 愛美自身、その自覚がある。今となっては、どうしてあの時にあんなバカなことを書いてしまったんだろうと後悔している。
 甘え下手にもほどがある。他にいくらでも書きようはあったはずなのに……。

「さやかちゃん、わたし……。おじさまに見捨てられたら、もうここにはいられなくなるの。他に行くところもないの。取り返しのつかないことしちゃったかもしれない」

「大丈夫だって、愛美! おじさまはこんなことで、愛美のこと見捨てたりしないよ! そんな器の小さい人じゃないはずでしょ? それは愛美が一番よく知ってるはずじゃん?」