(……そういえば、園長先生もさやかちゃんとおんなじようなことおっしゃってたっけ)

 このデジタル全盛期の時代にあって、〝あしながおじさん〟が愛美にメールではなく、手紙を書くことを求めた理由。それは、愛美の成長ぶりを目に見える形で残しておきたいからだと。

「まあ、それは発想が飛躍しすぎてるかもしんないけど。とにかくあんまり一人で深刻になんないことだね。グチだったらあたし、いっくらでも聞いてあげるからさ。あたしになら好きなだけ甘えていいよ」

「……うん、ありがと」

 愛美はためらいながらも頷く。けれど、心の中では密かにある決意を固めていた。

(さやかちゃんの気持ちはすごく嬉しいけど、わたしは誰にも甘えちゃいけないんだ。だから、もう決めた! こうなったら、とことんまで〝構ってちゃん〟になってやる! おじさまが根負けして返事を下さるまで!)

 〝構ってちゃん〟で結構。――愛美はもう開き直っていた。向こうがそう思っているならなおさら、それで押し通すつもりでいた。

(おじさまも血の通った人間なら、さすがに最後は()をあげるでしょ)

 ――それはともかく、愛美はまた咳込んだ。

「愛美、あんまりムリしちゃダメだよ? ただのカゼじゃないかもしんないし、明日は学校休んで病院でちゃんと診てもらった方がいいよ」

「うん、分かった。ありがとね」

 ――寮に帰った愛美は、今日も郵便受けに何も来ていないのを確認してから、どうすれば〝あしながおじさん〟がアクションを起こすのか考えた。

(コレなら、おじさまだって無視はできないよね♪)

 彼がロボットでもない限り、何かしらの反応があるはず。
 怒るかもしれないし、愛美に愛想(あいそ)を尽かすかもしれない。――でも、この時の愛美はそんなことを考えもしなかった。体調が悪いせいで、思考回路まで不調をきたしていたのかもしれない。