「えっ? いま、〝文才〟って……」
「そうなの。あの方ね、この部屋に置いてあった中学校の文芸部の部誌を会議室に持ってきて、あなたが書いた小説を声に出して読み上げられたのよ。あれには他の理事さんたちもビックリされてたわ」
「……そうだったんですか」
国語の教科書じゃあるまいし、小説はあまり声に出して読むようなものじゃない。それも、自分が書いた文章が人前で読み上げられたとなると、愛美は顔から火が出るくらい恥ずかしかった。
たとえ将来、本当に小説家になったとしても、それだけはやめてほしいと思っている。
「それでね、『彼女は進学させるべきだ!』って強く主張なさって。自分が援助するとまでおっしゃって下さったのよ」
「え……。じゃあわたし、進学できるんですか!?」
聞き間違いかと思い、愛美がビックリして大きな声を出すと、園長は大きく頷いた。
「ええ。あの方も、あなたの夢を応援したいそうよ。そのための援助は惜しまないっておっしゃってたわ。……ただね、あの方からは色々と条件を出されたんだけれど」
「条件……ですか?」
進学できると浮き足立っていた愛美は、園長先生のその言葉を聞いて改めて背筋を伸ばした。