「そうだ愛美。このこと、おじさまに報告しなくていいの?」

 さやかに言われるまで、そのことを忘れかけていた愛美はハッとした。

「そっか、そうだよね。わたし、そこまで考えてなかった。ありがと、さやかちゃん!」

 愛美の夢に一番期待してくれているのは、〝あしながおじさん〟かもしれないのだ。だとしたら、この喜ばしい出来事を真っ先に彼に報告するのがスジというものである。

「きっとおじさまも、愛美さんの入選を喜んで下さいますわよ。私も純也叔父さまにお知らせしておきますわ」

「……ありがと、珠莉ちゃん」

 純也さんに知らせると聞いて、愛美は照れた。彼ならきっと、手放しに大喜びして飛んでくるだろう。

(いやいやいやいや! そんなの純也さんに申し訳ないよ。忙しい人みたいだもん)

 ちょっと遠慮がちに思う愛美だった。飛んできて「おめでとう」を言われるなら、純也さんよりも〝あしながおじさん〟の方がいい。……まだ顔も本名も知らないけれど。

(……そうだ。今回の手紙には、さすがのおじさまも「おめでとう」ってお返事下さるよね)

 普段は自分で返事の一通も書かず、必要な時には秘書の久留島氏にパソコンで返事を書かせる彼も、自分が目をかけた女の子が夢への大きな一歩を歩みだしたとなれば、何かしらのアクションを起こすだろう。

(どうしても手紙書きたくないなら、スマホにメール送ってくれればいいんだし)

 いくら忙しい身でも、メールの一通くらいは送信できるだろう。――それにしても、便利な世の中になったものである。

 ――というわけで、部屋に戻って着替えた愛美は夕食前のひと時、座卓の上にレターパッドを広げてペンを執った。