「わあ、キレイ! 食べるのもったいない。でも美味しそう☆」

「お母さん、ありがと☆ みんなで食べよ♪」

「はーい。じゃあ切り分けるわね。治樹、紙皿とフォーク出してくれる?」

「ほいきた」

 秀美さんがケーキを切り分けてくれ――ケーキは実は二つあった――、治樹が出した紙皿に取り分けて、さやかと愛美が二人がかりで子供たちに配って回った。もちろん、三人の分もある。

「じゃあみんな、いただきま~す!」

「「「いただきま~す!」」」

 ケーキを食べ始めると、そこはもう大変なことになっていた。
 愛美たちお兄さんお姉さんの三人はそうでもないけれど、小さい子たちの食べ方といったらもう。愛美は母性本能をくすぐられた。

「あーあー、クリームでお顔がベタベタだねえ。お姉さんが拭いてあげる」

 すぐ隣りに座っている小さな男の子の、クリームまみれになった顔を、愛美はテーブルの上のウェットティッシュでキレイに拭いてあげた。

「愛美、やっぱ手馴れてるね―」

「施設にいた頃、よく小さいコたちにやってあげてたからね。――はい、いいお顔になったよ」

「愛美ちゃん、いいお母さんになりそうだな」

「……いやいや、そんな」

 愛美は治樹の言葉を謙遜(けんそん)で返した。

「お兄ちゃん、まだ愛美のこと諦めてないの?」

「……うっさいわ。オレはただ、素直に褒めただけ。なっ、愛美ちゃん?」

「えっ、そうだったんですか?」

 愛美が素でキョトンとしたので、さやかが大笑い。

「愛美、さぁいこー! めちゃめちゃ天然じゃんー!」

「……えっ、なにが?」

 今まで「天然だ」と言われたことがなかったし、自分でもそう思ったこともなかったので、愛美にはいまいちピンとこない。

「いいのいいの。愛美はもうそのまんまで」

「…………?」

 愛美が首を傾げたので、さやかはまた大笑い。治樹もつられて笑い、兄妹二人で大爆笑になったのだった。