愛美は頷く。この家に来る時の楽しみの一つだったのだ。

「そうそう。中学生以下のコたち限定なんだけどね。毎年、お兄ちゃんがサンタさんのコスプレしてプレゼント配るの。んで、あたしもトナカイコスで手伝ってるんだよ。今年は愛美にも手伝ってもらおっかな」

「わあ、楽しそう☆ わたしも手伝うよ!」

「んじゃ、愛美はサンタガールコスかな。トナカイじゃかわいそうだもんね」

「おお、いいじゃん! ぜってー可愛いとオレも思う」

 兄妹が盛り上がる中、愛美は自分がミニスカサンタになった姿を想像してみる。
 
(わたし、小柄なんだけど。似合うのかな……? でもまあ、トナカイよりは……)

「…………そうかな? じゃあ……、それで。でもいいの? さやかちゃん、今年もトナカイだよ? たまにはミニスカサンタのカッコしてみたいとか思わない?」

「あー、いいのいいの。もう慣れたし」

(慣れたんだ……)

 この兄と一緒に育ってきたら、きっとそうなるだろうと愛美も思った。

「あとね、お母さんが毎年クリスマスケーキ焼いてくれるんだ。それが超美味しいんだよねー」

「へえ、そうなんだ。それも楽しみだなあ」

 クリスマスは毎年ワクワクしていた愛美だけれど、今年は友達のお家で過ごす初めてのクリスマス。いつも以上にワクワクしていた。

(この楽しい時間は、あしながおじさんが下さった最高のプレゼントかも!)

 彼は十万円という大金と一緒に、友人と過ごす冬休みというこの有意義な時間もプレゼントしてくれたんだと愛美は思ったのだった。

「――愛美ちゃん。今日の晩ゴハンはハンバーグなんだけど、好き? あと、嫌いなものとか、アレルギーとかはない?」

 秀美さんが愛美に訊ねる。一家の主婦として、我が子の友人が家に連泊するとなれば色々と気を遣うんだろう。

「あ、はい。ハンバーグ、大好物です。好き嫌いもアレルギーもないです。何でも食べられますよ」