「愛美っ! もう……。ここ笑うとこじゃないって。……まあいっか」
さやかは笑っている愛美に抗議しながらも、どこか楽しそうだ。というか、初めて家に来た友達の前で兄とやりあったことがよっぽど恥ずかしかったらしい。
「――あ、お兄ちゃん。そういやお父さんは?」
「今日はちょっと遅くなるって言ってたけど。父さんも愛美ちゃんに会えるの楽しみにしてたから、晩メシには間に合うんじゃねえの?」
「そっか……。四月から新年度だから、今からあちこち注文入るんだよね」
さやかの父親が経営しているのは、作業服メーカーである。自社製品だけではなく外部の企業からユニフォームの注文も受けているため、この時期は忙しくなるのだ。
特に、社長の忙しさは他の社員の比ではない。
「――あの、治樹さん……でしたっけ。わたしからちょっとお話があるんですけど」
「ん? なに?」
治樹が自分に好意を持っているらしいことを思い出した愛美は、思いきって自分から「好きな人がいる」と打ち明けることにした。
「あの……、さやかちゃんからも聞いてると思うんですけど。わたし、他に好きな人がいて。わたしのこと気に入ってくれてるのは嬉しいんですけど、お付き合いとかそういうのは……、ちょっと……。ゴメンなさい」
本当は、もっとキッパリ言うつもりだったのだけれど。愛美は恋も初めてなら、異性をフるのもこれが初めてだ。治樹がいい人そうなので、何だか申し訳ない気持ちになってしまう。
「…………あー、こんなに早くフられるとはなぁ……。ちょっとショックだわ、オレ」
「ホントにゴメンなさい。でもわたし、自分の気持ちにウソつきたくなくて」
「いや、もういいよ。謝んないで。愛美ちゃんがすごくいいコだってことは分かったから。さやかにも何割か……いや何パーセントか分けてやってほしいわ」
さやかは笑っている愛美に抗議しながらも、どこか楽しそうだ。というか、初めて家に来た友達の前で兄とやりあったことがよっぽど恥ずかしかったらしい。
「――あ、お兄ちゃん。そういやお父さんは?」
「今日はちょっと遅くなるって言ってたけど。父さんも愛美ちゃんに会えるの楽しみにしてたから、晩メシには間に合うんじゃねえの?」
「そっか……。四月から新年度だから、今からあちこち注文入るんだよね」
さやかの父親が経営しているのは、作業服メーカーである。自社製品だけではなく外部の企業からユニフォームの注文も受けているため、この時期は忙しくなるのだ。
特に、社長の忙しさは他の社員の比ではない。
「――あの、治樹さん……でしたっけ。わたしからちょっとお話があるんですけど」
「ん? なに?」
治樹が自分に好意を持っているらしいことを思い出した愛美は、思いきって自分から「好きな人がいる」と打ち明けることにした。
「あの……、さやかちゃんからも聞いてると思うんですけど。わたし、他に好きな人がいて。わたしのこと気に入ってくれてるのは嬉しいんですけど、お付き合いとかそういうのは……、ちょっと……。ゴメンなさい」
本当は、もっとキッパリ言うつもりだったのだけれど。愛美は恋も初めてなら、異性をフるのもこれが初めてだ。治樹がいい人そうなので、何だか申し訳ない気持ちになってしまう。
「…………あー、こんなに早くフられるとはなぁ……。ちょっとショックだわ、オレ」
「ホントにゴメンなさい。でもわたし、自分の気持ちにウソつきたくなくて」
「いや、もういいよ。謝んないで。愛美ちゃんがすごくいいコだってことは分かったから。さやかにも何割か……いや何パーセントか分けてやってほしいわ」