さやかちゃんのお父さんは小さいけど会社を経営されてて、クリスマスは従業員さんのお子さんを招いてクリスマスパーティーをやるそうですし、お正月にはご家族で川崎大師に初詣に行くそうです。さやかちゃんだけじゃなくて、ご家族もわたしのこと大歓迎して下さるそうです。
 わたし、さやかちゃんのお家に行きたいです。おじさま、どうか反対しないで下さい。お願いします!

             十二月十六日        愛美  』

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 ――それから四日後。

「……ん?」

 寮に帰ってきた愛美は、郵便受けに一通の封筒を見つけて固まった。

(久留島さん……、おじさまの秘書さんから? まさか、さやかちゃんのお家に行くの反対されてるワケじゃないよね?)

 差出人の名前を見るなり、愛美の眉間(みけん)にシワが寄る。

「どしたの、愛美?」

 そんな彼女のただならぬ様子に、さやかが心配そうに声をかけてきた。

「あー……。おじさまの秘書さんから手紙が来てるんだけど、なんかイヤな予感がして」

「まだそうと決まったワケじゃないじゃん? 開けてみなよ」

「うん……」

 さやかに促され、愛美は封を切った。すると、その中から出てきたのはパソコンで書かれた手紙と、一枚の小切手。

「いちじゅうひゃくせんまん……、十万円!?」

 そこに書かれた数字のゼロの数を数えていた愛美は、困惑した。
 毎月送られてくるお小遣いの三万五千円だって、愛美には十分な大金なのに。十万円はケタが大きすぎる。

(こんな大金送ってくるなんて、おじさまは一体なに考えてるんだろ?)

「……ねえ、さやかちゃん。コレってどういうことだと思う?」

「さあ? あたしに訊かれても……。手紙に何か書いてあるんじゃないの?」

「あ……、そっか」

 愛美はそこで初めて手紙に目を通した。

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『相川愛美様

 Merry(メリー) Christmas(クリスマス)
 この小切手は、田中太郎氏からのクリスマスプレゼントです。
 お好きなようにお使い下さい。        久留島栄吉  』