「へえ……、一人暮らしなんだ」

 彼がひとクセもふたクセもありそうな(あくまでも、愛美の想像だけれど)辺唐院一族の中にいる姿も想像できないけれど、タワーマンションでの暮らしぶりもまた想像がつかない。

(ゴハンとかどうしてるんだろう? もしかして、料理上手だったりするのかな?)

 まあ、お金持ちだからそうとも限らないけれど。外食とかケータリングも利用しているだろうし。

「ウチはねえ、毎年お正月は家族で川崎(かわさき)大師に(はつ)(もうで)に行くんだよ。愛美も一緒に行けたらいいね」

「うん」

 初詣といえば、愛美も〈わかば園〉にいた頃には毎年、園長先生に連れられて施設のみんなで近所の小さな神社に行っていた。
 おみくじもなければ縁起物もない、露店すら出ていない、本当に小さな神社だった。でも、そこにお参りしなければ新しい年を迎えた気がしなくて、愛美もそれがお正月の恒例行事のように思っていた。

「――さて、お腹もすいたし。そろそろ寮に帰ろっか」

「そうだね」

 ――寮の部屋で着替えて食堂に行き、お昼ゴハンを済ませると、愛美はさっそくさやかの家に招かれたことを報告する手紙を〝あしながおじさん〟宛てに(したた)めた。

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『拝啓、あしながおじさん。

 お元気ですか? わたしは今日も元気です。
 期末テストも無事に終わって、わたしは今回も一〇位以内に入りました。
 そして、学校はもうすぐ冬休みに入ります。それで、さやかちゃんがわたしを「冬休みはウチにおいで」って誘ってくれました。
 さやかちゃんのお家は埼玉県にあって、ご両親とお祖母さん、早稲田大学三年生のお兄さん、中学一年生の弟さん、五歳の妹さん、そしてネコ一匹の大家族です! ものすごく賑やかで楽しそう!
 わたし、この高校に入ってからお友達のお家に招かれたのは初めてなんです。それでもって、お友達のお家にお泊りするのは生まれて初めてです。
 わかば園では、学校行事以外での外泊は禁止されてましたから。