きっと、おじさまも反対しないだろうと愛美も思っていた。
 彼女の手紙から、〝あしながおじさん〟が受けているさやかへの印象は、好ましいものでしかないだろうから。

「わたし、さっそくおじさまに手紙書くよ。返事来なかったらOKだと思うから」

 あの久留島秘書のことだから、反対だとしたらまたパソコン書きの手紙を送りつけてくるだろう。――ひどい言い草だけれど。

「分かった。じゃ、分かり次第、あたしも実家に連絡する。一緒に来られるといいね。きっとウチの家族、愛美のこと大歓迎してくれるよ」

「うん! わたしも楽しみ!」

(おじさまが、偏屈な分からず屋じゃありませんように……!)

 愛美は心の中でそう祈った。そして、もしも彼がそういう人だったら縁切ってやる、と的外れなことを誓ってもいた。

(実際には縁切らないけど。っていうか切れないし)

 愛美の学費や寮費は彼が支払ってくれているのだ。万が一縁を切ったらどういうことになるかは、愛美自身がよく分かっている。

「――ところで、珠莉は冬休みどうすんの? また海外?」

 さやかがやっと思い出したように、珠莉に話を振った。

「いいえ。我が家は毎年、クリスマスから新年まで、東京の家で過ごすことになってますの。一族のほぼ全員が屋敷に集まるんですのよ」

 愛美はその光景を想像してみた。――〈辺唐院グループ〉の一族、その錚々(そうそう)たる顔ぶれが一堂に会する光景を。

(……うわぁ、なんかスゴい光景かも)

 でも、その中にあの純也さんがいる光景だけは、どうしても想像できない。

「……ねえ珠莉ちゃん。純也さんも来るの?」

「いいえ、純也叔父さまはめったに帰っていらっしゃらないわね。叔父さまは一族と反りが合わないらしくて。タワーマンションで一人で暮らしてらっしゃるわよ」