心許せる間柄が持つ、独特の温かさ。
 この『忘れ傘』に特別な居心地の良さを感じるのは、三人のそうした優しさが漂っているからなのかもしれない。

「あ、安心して。三人の絆に割り入ろうなんて図々しいことは考えてないから。あー、私もお葉都ちゃんと、三人みたいな関係になれるように頑張ろー!」

「えー、ボクは彩愛ちゃんももう、大好きで大切なひとりって思ってるんだけどなあ」

「カグラちゃん……っ! 私もカグラちゃんが大好きで大切よー! 本当、外で必要なものがあったら、何でも言ってね!」

「わーい、さっすが彩愛ちゃん! そーゆーかっこいいトコもボク大好きー!」

 きゃっきゃと両手を合わせていると、「あのな……」とくたびれた声。雅弥だ。
 納得いかなそうに眉根を寄せて、

「だから簡単に"神"と約束を交わすなと……。ともかく、アンタはアイツの"化け術"が完成したら、いいかげん面倒事に首を突っ込むのは終いに……」

「……え?」

 刹那、それまで私たちのやり取りを眺めながらパフェを堪能していた郭くんが、アイスをすくう手を止めた。
 驚愕に満ちた目で見上げてくる。

「その、お葉都ってひと、あやかしなの……?」

「そうよ。お葉都ちゃんはのっぺらぼうなの。とっても優しくて、努力屋な子でね。私にとって、初めてのあやかしのお友達」

 郭くんはますます困惑を滲ませて、

「……ヒトとあやかしは、友達になれるの?」

「なれるもなにも、郭くんとお爺さんもそうだったんじゃないの?」

「……わからない」

 振られた淡い灰色の髪が、さらさらと左右する。

「……話は、沢山した。お菓子も、お茶も……ご飯も一緒に、よく食べた」

 けど、と。
 郭くんは寂し気に瞳を伏せ、スプーンを持つ手を下げる。

「……友達だって、言ったことはない。僕も、あの人も。だって僕はあやかしで、あの人はヒトだから」

 先程までの輝いた瞳はどこへやら。郭くんの周囲に、どんよりとした重い空気が漂う。
 その落胆っぷりに慌てつつも、私ははたと気が付いた。

(言われてみたら、私もお葉都ちゃんに"友達"って言ってもらった覚えがない……!)

 あんなに全身全霊で、好意を向けてくれているお葉都ちゃん。
 それでもたったの一度も、私を"友達"とは――。

(まさか、私が知らないだけで、あやかしとヒトは友達になるのを禁止されてるとか……!?)

「ね、ねえ雅弥……っ! もしかして、あやかしとヒトは友達になったらいけないって掟とかあったりする?」

「……は?」