「ただいまです、渉さん。それは……?」

「雅弥様と彩愛様が無事、パートナーとして正式な初仕事を終えられたのです。ささやかながら、俺からのお祝いとしてご用意させて頂いたのですが……受け取って頂けますか?」

 ええと、パートナーとしてというか、カグラちゃんへの"対価"だったんだけども……。
 けれどどうにもこう、渉さんから発せられる全力の「嬉しいです!」ってオーラを前にすると、否定しにくい。
 それは雅弥も同じみたいで、「だから……パートナーではない」って苦々しそうに言うも、あとはどこか諦めた風に息をついただけ。

(うーんまあ、細かいことはいっか)

 二人で解決してきたのは事実だし、渉さんがせっかく用意してくれたんだもの。
 ここは美味しく頂くのが礼儀ってモノでしょ!

「ありがとう、渉さん。それじゃあ、遠慮なく頂きます」

「はい! ぜひ!」

 嬉し気に花を飛ばした渉さんが、カグラちゃんと入れ替わるようにして、いそいそと靴を脱いで上がってくる。

「こちらは宇治の抹茶を使用したソフトクリームと寒天をベースに、この時期に数量限定でお出ししている、千葉県産の"くろいちご"を合わせました抹茶パフェになります」

「くろいちご? 白いちごは食べたことがあるけれど……」

 疑問に首を傾げた私の眼前に、

「さすがは彩愛様。白いちごをご存じでしたか」

 渉さんが抹茶パフェを置いてくれる。
 ぐるりと重なりながら山を描く深い抹茶色のソフトクリームに、白玉と餡子、そして一口サイズにカットされたイチゴがお花のように円を描いて盛られたパフェ。
 馴染みある苺よりも深い……アメリカンチェリーを思わせる深紅色の果実は、たしかに「くろいちご」の名称にぴったり。
 深緑と白に黒、そして苺の赤とコントラストがすごく綺麗で、上品ながらも華やかな佇まいが『忘れ傘』のスイーツらしい。

「この"くろいちご"は、千葉でも限られた農家さんでしか栽培されていないので、市場にはあまり出ないんです。分けて頂けたのは、たいへんラッキーでした」

「え、すごい。それって、とてつもなく珍しいってことですよね?」

「最近は大手の製菓店でも取り扱いが増えてきているようですが、同じく数量を絞ってのご提供だったかと。なので実際に口にできる方は、まだまだ限られているのではないでしょうか」

「わあ……。だめ、やっぱりそんな貴重なパフェをご厚意で頂くなんて……! 渉さん。私、ちゃんとお代金払うんで、伝票作ってください」