言われてやっと、腑に落ちた。
 そうか。カグラちゃんが気付いてくれたから、雅弥が来てくれたんだ。

(後でカグラちゃんにお礼言わなきゃ)

「……すごいね。神様って危険を察知するとか、ホントに出来るんだ」

「んーとね、それなりに"縁"を繋いだ相手じゃないと、そーゆーのはちょっと無理かな」

 声に振り返ると、にこりと笑んだカグラちゃんが「よいせ」と上り口で靴を脱いでいた。
 私の横で膝を折ると、

「雅弥はほら、意地っ張りでしょ? だからちょっと心配で、彩愛ちゃんに"護り"を付けたんだ。勝手にごめんね?」

「謝らないで。カグラちゃんのおかげで、私は助けて貰えたんだもの。ありがとうね」

「ううん。お礼なら"護り"の子に言ってあげて。その子がちゃんと報せてくれたから、ボクも雅弥も彩愛ちゃんのピンチに気づけたんだよ」

 ということは、その"護り"の子とやらが、一番はじめに私を助けてくれたってことで。

「そうだったんだ……全然気がつかなくって、悪いことしちゃった」

 これはしっかりお礼をしないと。

「その"護り"の子って、何処にいるの?」

 尋ねた私に、カグラちゃんは「そこだよ」と壁際に置いていた私の鞄を指さした。
 え、まさか鞄の中に?

(雅弥のよく使う、子狐ちゃんみたいな小さい子なのかな)

 急いで鞄を引き寄せ、膝の上で開く。

(うっかり荷物で潰してなきゃいいけど……)

 不安ながらも、慎重に中を探す。
 けれどもそれらしき姿は、どこにも見当たらない。

「……もしかして、どこかに落としてきちゃったとか!?」

 これは、とんでもなくマズイ事態では。
 そう焦燥を浮かべる私を見て、カグラちゃんは可笑しそうにクスクスと笑った。

「ううん。ちゃーんといるから安心して、彩愛ちゃん。――"鈴"、持ってるよね?」

「鈴……?」

 はっと気づいた私は、急いでスマホを掴み上げる。
 引き上げられた勢いに、相も変わらず鳴らない鈴が、振り子のごとくゆらりと揺れた。
 ――まさか。

「その子ね、最初に会った時から強い"護り"の気を持ってたんだ。だからちょっと力をあげたけで、すぐに息づいてくれたよ。さすがにボクも、苗床なしで一から"護り"を作るには、時間がかかるからさ」

 カグラちゃんは鈴を人差し指でつつき、「ちゃんとご主人様を守って、キミはいい子だね」と微笑む。

「この鈴、どこで手に入れたの? その辺りで簡単に受けれるモノじゃないでしょ」