カグラちゃんに同意するようにして頷いたお葉都ちゃんが、「これは渉様からの受け売りでございますが」と続け、

「こちらのケーキに使われているクリームチーズもバターも、北海道の牧場からお届け頂いているそうです。ブルーベリーのコンフィチュールは、そのご親戚の農園から」

「すごい。まさかの浅草で北海道気分……っ!」

「チーズはその栄養価の高さから美容と健康に良いとされる食材ですし、ブルーベリーもまた、強い抗酸化作用を持つアントシアニンや、食物繊維を多く含んでおります。彩愛様には、一日も早く元気になって頂かなくては」

「わあ……そう聞くと、このチーズケーキが特効薬に見えてきた」

 まあ、たとえただのスイーツでも、美味しく食べちゃうんだけど。

「うん。もっと元気になるためにも、ありがたく頂くね」

「……それ以上にか?」

 ぼそりした雅弥の嫌味なんて、聞こえません。
 嬉々として「いただきます」と両手を合わせた刹那、

「あのう、すみませーん!」

 店の扉が開いた音と、若い女性の声が二人ぶん。
 お客様だ。気づいたカグラちゃんがさっと立ち上がり、「はーい! いらっしゃませー!」と上り口で靴を履きながら、私達に目配せをして対応に向かう。
 そうだった。"普通"の人間には、お葉都ちゃんの姿は見えない。
 私は声を潜めて、

「お葉都ちゃんは、注文しなくていいの?」

「はい。お客様もみえましたし、これから夕刻時に向けた仕込みがいくつか必要となりますので、厨房にてお手伝いをして参ります」

「そっかあ……」

 うう、寂しい。けれどそういう理由なら、仕方ない。
 あからさまな落胆を見せる私に、お葉都ちゃんは着物の袖口を上げて微笑するような仕草をしつつ、

「また、頃合いを見て戻って参ります」

 そう会釈して、行ってしまった。

「やっとゆっくりお喋り出来ると思ったのに……私の話だけでおわっちゃった……」

 涙をのみつつ木製のフォークを持つ。
 と、呆れたような声で、

「……後でまた来ると言っていただろう」

「そうだけど……うう、いただきます」

 尖ったケーキの先をフォークで切り取って、ブルーベリーソースを絡めてから口に入れる。
 ねっとりとした濃厚なチーズの食感。贅沢なミルクの香りが噛むたび舌に溶けて、けれども甘酸っぱいブルーベリーのおかげで、くどさは感じない。

「美味しい……、美味しいよお……」

 口内に広がるこの感動を分かち合いたい。
 普段は一人での食事になんの抵抗もないのに、ここは誰かと楽しく過ごせる場だと認識してしまっているせいか、ものすごく寂しい。