「だいたい、私一回も"嫌い"だなんて言ってないでしょ? そりゃあ確かにわけわからないしこと多いし冷たいし、どうコミュニケーションとったらいいのかなーって手探りな部分もあるけども、でも雅弥ってちゃんと私の要望聞いてくれるし何だかんだ付き合ってくれるし、これならこれからも上手いことやっていけそうだなーって、嫌うどころかむしろ好意的に思っちゃったりしてたのに」
「わかった。そこは、もういい」
「いや良くないでしょ! こんだけ助けてもらっておいて、"でもアナタのことは嫌いだから"なんて言えるほどツンデレじゃないわよ私!」
「だから、分かったと言っている」
雅弥は静止を示すようにして左手を静かに掲げると、顔を背けて疲れたように首を振った。
そのまま視線は明後日の方向を向いたまま、
「早とちりをして、悪かった。だからもう、やめてくれ」
……まさか雅弥の口から謝罪の言葉が聞けるとは。
こんなの初めてじゃない?
そんな動揺を抱えながら「う、うん」と反射的に頷くと、やっとのことで雅弥は私に視線を戻し、
「……なら改めて訊くが、どうして電話を寄こさなかった」
「だから、理由はさっき」
「『忘れ傘』は店だ。店には電話があるだろう。インターネットで店の名前を調べれば、番号だって出てくる」
「………………」
「…………」
懐疑的な視線を受けながら、私は機械仕掛けの人形のごとく立ち上がり、数メートル先で相変わらずへたり込んでいる鞄へ向かった。
スマホを取り出して、検索画面に『浅草 忘れ傘』と打ち込む。
表示された結果画面の、上から三番目。それらしいリンクをタップすると、見知った店の門構えが画面に表示された。
スクロールした下部には、店の住所と共に電話番号が記載されて――。
「…………ああああああああああああ」
脱力。今更だけど、夜のアスファルトってひんやりしてるんだ。
そうじゃなくて。
「……まさか店に電話がないと思われていたとは、考えなかった」
「いやホントそうじゃんね……立派なカフェじゃんね……。私もどうして調べなかったのか自分が全然わからない……」
普段、知らない土地でも近場のカフェ探したり、散々検索しまくっているくせに。
「……まあ、なんだ。ともかく今回は手遅れになる前に俺が間に合ったのは、運が良かったからだ。それを忘れるな」
そんなに私の落ち込みようが酷いのか、立ち上がった雅弥は膝を叩き、それ以上を責めずにいてくれた。
その微妙な心遣いが、なんだかすごく心に沁みる。
「わかった。そこは、もういい」
「いや良くないでしょ! こんだけ助けてもらっておいて、"でもアナタのことは嫌いだから"なんて言えるほどツンデレじゃないわよ私!」
「だから、分かったと言っている」
雅弥は静止を示すようにして左手を静かに掲げると、顔を背けて疲れたように首を振った。
そのまま視線は明後日の方向を向いたまま、
「早とちりをして、悪かった。だからもう、やめてくれ」
……まさか雅弥の口から謝罪の言葉が聞けるとは。
こんなの初めてじゃない?
そんな動揺を抱えながら「う、うん」と反射的に頷くと、やっとのことで雅弥は私に視線を戻し、
「……なら改めて訊くが、どうして電話を寄こさなかった」
「だから、理由はさっき」
「『忘れ傘』は店だ。店には電話があるだろう。インターネットで店の名前を調べれば、番号だって出てくる」
「………………」
「…………」
懐疑的な視線を受けながら、私は機械仕掛けの人形のごとく立ち上がり、数メートル先で相変わらずへたり込んでいる鞄へ向かった。
スマホを取り出して、検索画面に『浅草 忘れ傘』と打ち込む。
表示された結果画面の、上から三番目。それらしいリンクをタップすると、見知った店の門構えが画面に表示された。
スクロールした下部には、店の住所と共に電話番号が記載されて――。
「…………ああああああああああああ」
脱力。今更だけど、夜のアスファルトってひんやりしてるんだ。
そうじゃなくて。
「……まさか店に電話がないと思われていたとは、考えなかった」
「いやホントそうじゃんね……立派なカフェじゃんね……。私もどうして調べなかったのか自分が全然わからない……」
普段、知らない土地でも近場のカフェ探したり、散々検索しまくっているくせに。
「……まあ、なんだ。ともかく今回は手遅れになる前に俺が間に合ったのは、運が良かったからだ。それを忘れるな」
そんなに私の落ち込みようが酷いのか、立ち上がった雅弥は膝を叩き、それ以上を責めずにいてくれた。
その微妙な心遣いが、なんだかすごく心に沁みる。