「ありがとう」受け取った私が興味津々でメニューを開くと、
「……おい。アイツはいつ呼んだらいいんだ」
低い声で、雅弥が尋ねてくる。
「え、ここで呼んでいいの?」
「そうでなければ、ここに居る意味がないだろうが」
「でも、お店の人……店長さんの許可とか」
確認するようにしてカグラちゃんを見遣ると、彼女は「あ、それは大丈夫だよー」と人差し指を頬に当てて、
「だってここ、雅弥のおウチだからね。いうなれば、雅弥が店長さんってトコかな」
「え!? 店長!? しかもここ、雅弥の家なの!?」
「うるさい。落ち着いて話せないのかアンタは」
「だって、祓い屋だって……っ!」
「俺は祓い屋だ。この店の経営については基本的に関わっていない。それと、俺には家がないと思っていたのか?」
「そーゆーことじゃ……っ」
(あーもー、衝撃事実発覚の連続すぎて頭こんがらがってきた!)
思考を放棄した私はやけっぱち気味に、
「もういいわ、私が悪かったわよ。問題ないのなら、とっととお葉都ちゃんを呼んでちょうだい!」
「……随分と偉そうだな」
「雅弥にだけは言われたくない!」
私の抗議を華麗に無視して、雅弥は胸元の合わせ目からお守りくらいの小さな紙を取り出した。
片面に模様のような筆文字が書かれているが、私にはそれがなんなのか検討もつかない。
すると、右手で摘まんだそれに、雅弥がふっと静かに息を吹きかけた。
瞬間、その紙がくしゃりと丸まり、ぽんっと小さな音をしたかと思うと、煙の中から掌サイズの白い子狐が現れた。
「……任せたぞ」
呟く雅弥にこくりと頷いて、子狐が姿を消す。
雅弥はやれやれといった風に机上の湯呑を手に取り、
「あとは、あののっぺらぼう次第だ。素直に向かってくるのなら、そうかからないだろう」
「今の狐ちゃんが、お葉都ちゃんを連れてきてくれるってこと?」
私の疑問を引き取ってくれたのは、カグラちゃんだ。
「基本的に、現世と隠世の行き来には、鳥居や祠なんかが"境界"になるんだよ。さっきの子が裏庭の祠に案内してくれるから、来たらボクがお迎えにいってくるね」
丁寧なカグラちゃんの説明に「そうなんだ……。よろしくね」と会釈すると、
「うん、任せて! とゆーことで、今のうちにオーダー聞いちゃうね。気になるのある?」
「ええと、それじゃあ……温かいほうじ茶と、外の看板におススメって書いてあった、あんみつをお願いできる?」
「はーい、承りました! ぱぱっと用意するから、ちょっと待っててね」
手慣れたウインクをパチリと決めて、靴を履いたカグラちゃんが長い暖簾の奥に消えていく。
「……おい。アイツはいつ呼んだらいいんだ」
低い声で、雅弥が尋ねてくる。
「え、ここで呼んでいいの?」
「そうでなければ、ここに居る意味がないだろうが」
「でも、お店の人……店長さんの許可とか」
確認するようにしてカグラちゃんを見遣ると、彼女は「あ、それは大丈夫だよー」と人差し指を頬に当てて、
「だってここ、雅弥のおウチだからね。いうなれば、雅弥が店長さんってトコかな」
「え!? 店長!? しかもここ、雅弥の家なの!?」
「うるさい。落ち着いて話せないのかアンタは」
「だって、祓い屋だって……っ!」
「俺は祓い屋だ。この店の経営については基本的に関わっていない。それと、俺には家がないと思っていたのか?」
「そーゆーことじゃ……っ」
(あーもー、衝撃事実発覚の連続すぎて頭こんがらがってきた!)
思考を放棄した私はやけっぱち気味に、
「もういいわ、私が悪かったわよ。問題ないのなら、とっととお葉都ちゃんを呼んでちょうだい!」
「……随分と偉そうだな」
「雅弥にだけは言われたくない!」
私の抗議を華麗に無視して、雅弥は胸元の合わせ目からお守りくらいの小さな紙を取り出した。
片面に模様のような筆文字が書かれているが、私にはそれがなんなのか検討もつかない。
すると、右手で摘まんだそれに、雅弥がふっと静かに息を吹きかけた。
瞬間、その紙がくしゃりと丸まり、ぽんっと小さな音をしたかと思うと、煙の中から掌サイズの白い子狐が現れた。
「……任せたぞ」
呟く雅弥にこくりと頷いて、子狐が姿を消す。
雅弥はやれやれといった風に机上の湯呑を手に取り、
「あとは、あののっぺらぼう次第だ。素直に向かってくるのなら、そうかからないだろう」
「今の狐ちゃんが、お葉都ちゃんを連れてきてくれるってこと?」
私の疑問を引き取ってくれたのは、カグラちゃんだ。
「基本的に、現世と隠世の行き来には、鳥居や祠なんかが"境界"になるんだよ。さっきの子が裏庭の祠に案内してくれるから、来たらボクがお迎えにいってくるね」
丁寧なカグラちゃんの説明に「そうなんだ……。よろしくね」と会釈すると、
「うん、任せて! とゆーことで、今のうちにオーダー聞いちゃうね。気になるのある?」
「ええと、それじゃあ……温かいほうじ茶と、外の看板におススメって書いてあった、あんみつをお願いできる?」
「はーい、承りました! ぱぱっと用意するから、ちょっと待っててね」
手慣れたウインクをパチリと決めて、靴を履いたカグラちゃんが長い暖簾の奥に消えていく。