「……ええと、違ってたらごめんなさい。それってつまり、"お稲荷さま"ってことだったりします?」
「あ、惜しい! 確かにボクがいるのは"お稲荷さま"を祀っている祠なんだけど、ボクは"お稲荷さま"の眷属の狐なんだあ。"稲荷"って狐のことじゃなくて、"宇迦之御魂神"様のことだからね。ええと、ほら」
私が瞬きをした一瞬で、彼女ことカグラちゃんの頭に白い狐耳がひょこりと二つ現れた。おまけにスカートの下からは、モフりとした尻尾が伸びている。
どちらも彼女の髪色と同じ、艶やかな銀色の毛に覆われていて美しい。
「信じてくれた?」
お伺いを立てるようにしてコテリと首を傾げたカグラちゃんに、私は「はい、もちろん!」と勢いよく頷いた。
美少女に狐耳と尻尾。しかも上目遣いまでされたら、疑う余地もない。
というかすっごくカワイイ。
「ええと、これも"化け術"って理解であってます?」
「あ、もしかして昨日の"のっぺらぼう"さんに聞いた? ちょっと違うけど、同じ認識でいいと思うよ。ヒトからすれば、あやかしとボクの差なんて、紙一重みたいなもんだしね」
そう、なのだろうか。
なんとなく、あやかしと神様を一緒にしてはいけないような気がするけど……。
「それよりさあ、もっと雅弥と話すみたいにしゃべってくれていいよ。ボクも仲良しになりたいし!」
耳と尻尾をポンッと消して、カグラちゃんが自身の両手を組む。
私に兄弟はいないけれど、こんな妹がいたら溺愛しちゃうだろうなあと予感させる可愛らしさに、つい頬が緩んでしまう。
「それじゃあ、お言葉に甘えて。私は柊彩愛。特に霊感なんかも一切ない普通の社会人なんだけど、お葉都ちゃん……ええと、昨日ののっぺらぼうちゃんの名前なんだけど、彼女が言うには、女の嫉妬の気が纏わりついてるみたい」
「あ、それ、彩愛ちゃんも知ってたんだ?」
「カグラちゃんにも見えるの?」
「うん、わかるよお。彩愛ちゃんが望むなら、相手の子をちょーっとばかし懲らしめることも出来るけど、どうする?」
コーヒーにミルクと砂糖はいりますか? に近い気軽な調子で尋ねられ、私は一瞬躊躇するも、
「……いったん、まだ様子を見ておいてもいい?」
「そっかあ、それじゃあ、必要になったらいつでも言ってね」
「……ありがとう」
神様ってこんなカジュアルに出会って、サクッと手助けしたもらってもいいものなんだっけ。
これまでの人生にない例外続きで頭を悩ませていると、「これがメニュー表だよ!」とカグラちゃんが小さな冊子をくれた。
そうだ。ここは喫茶店だった。
「あ、惜しい! 確かにボクがいるのは"お稲荷さま"を祀っている祠なんだけど、ボクは"お稲荷さま"の眷属の狐なんだあ。"稲荷"って狐のことじゃなくて、"宇迦之御魂神"様のことだからね。ええと、ほら」
私が瞬きをした一瞬で、彼女ことカグラちゃんの頭に白い狐耳がひょこりと二つ現れた。おまけにスカートの下からは、モフりとした尻尾が伸びている。
どちらも彼女の髪色と同じ、艶やかな銀色の毛に覆われていて美しい。
「信じてくれた?」
お伺いを立てるようにしてコテリと首を傾げたカグラちゃんに、私は「はい、もちろん!」と勢いよく頷いた。
美少女に狐耳と尻尾。しかも上目遣いまでされたら、疑う余地もない。
というかすっごくカワイイ。
「ええと、これも"化け術"って理解であってます?」
「あ、もしかして昨日の"のっぺらぼう"さんに聞いた? ちょっと違うけど、同じ認識でいいと思うよ。ヒトからすれば、あやかしとボクの差なんて、紙一重みたいなもんだしね」
そう、なのだろうか。
なんとなく、あやかしと神様を一緒にしてはいけないような気がするけど……。
「それよりさあ、もっと雅弥と話すみたいにしゃべってくれていいよ。ボクも仲良しになりたいし!」
耳と尻尾をポンッと消して、カグラちゃんが自身の両手を組む。
私に兄弟はいないけれど、こんな妹がいたら溺愛しちゃうだろうなあと予感させる可愛らしさに、つい頬が緩んでしまう。
「それじゃあ、お言葉に甘えて。私は柊彩愛。特に霊感なんかも一切ない普通の社会人なんだけど、お葉都ちゃん……ええと、昨日ののっぺらぼうちゃんの名前なんだけど、彼女が言うには、女の嫉妬の気が纏わりついてるみたい」
「あ、それ、彩愛ちゃんも知ってたんだ?」
「カグラちゃんにも見えるの?」
「うん、わかるよお。彩愛ちゃんが望むなら、相手の子をちょーっとばかし懲らしめることも出来るけど、どうする?」
コーヒーにミルクと砂糖はいりますか? に近い気軽な調子で尋ねられ、私は一瞬躊躇するも、
「……いったん、まだ様子を見ておいてもいい?」
「そっかあ、それじゃあ、必要になったらいつでも言ってね」
「……ありがとう」
神様ってこんなカジュアルに出会って、サクッと手助けしたもらってもいいものなんだっけ。
これまでの人生にない例外続きで頭を悩ませていると、「これがメニュー表だよ!」とカグラちゃんが小さな冊子をくれた。
そうだ。ここは喫茶店だった。