「アナタも一緒にいればいいんじゃない? そうすれば、もし万が一"うっかり"があっても、その時は今回みたいに止めることが出来るんだし。うんうん、さすが冴えてる私! 名案!」

「だから、俺は散々巻き込むなと」

「そうとなれば問題はどこに集まるかだけど……あやかしもOKの店って、どう検索すべき?」

「話を聞け!」

「なに? いい場所あるの?」

「そうじゃなくてだな……っ!」

 憤怒する男もなんのその、着々と計画をたてていると、「……あのう、もし」と黙っていた彼女が私を呼んだ。

「どうかした?」

 私が尋ねると、彼女は緩く首を振って、

「これ以上、ご迷惑をおかけするわけには……」

「あら、私は迷惑だなんて思ってないけど?」

「俺は迷惑だ」

「それなら、やっぱり二人で……」

「それは駄目だ。絶対に、駄目だ!」

「もー、だったら大人しく付き合ってよ。適当にその場にいるだけでいいんだから」

 この彼女の問題は私が解決する。
 これはもう、私の決定事項なのだから、こちらだって譲れない。

「……お言葉を借りるようで、申し訳ないのですが」

 おずおずとした彼女の声。

「どうして私に、そこまでして下さるのです?」

 彼女はきっと、戸惑っているのだと思う。
 私は「そうねえ」と少しだけ考えてから、

「私ね、霊感とか一切ないから、今までお化けもあやかしも出会ったことないのよ。たぶんね、本当なら出逢わないまま、一生を終えていたんだと思うの。それがこうしてアナタを知って、話まで出来て……。これって、"ご縁"だと思うのよ。おばあちゃん……私を育ててくれた祖母がね、"ご縁"ってのは奇跡のような必然だから、全てに意味があるんだってよく言っていたの。だから大切にしなさいって教えられていたから、アナタとのことも、ちゃんとしたいなって。どう、答えになった?」

 苦笑交じりに尋ね返すと、彼女はすっと(おもて)を伏せた。
 握った手が、肩が、小刻みに震えている。

(え、これはまさか泣いて――?)

 慌てて「大丈夫?」とない顔を覗き込もうとすると、彼女が「申し訳ありません」と呟いた。

「どうにも嬉しくて、たまらないのです。私はずっと、人間にとってあやかしは悪しき討伐対象なのだと思っておりました。それゆえ私達は永遠に、この身ではヒトと交わることなく、隠れ続けていなければならないのだと。それがこんなにも寄り添って頂けたばかりか、"ご縁"だとまで……」