「お葉都ちゃんで言うと、その簪の赤玉だね。それと、彩愛ちゃんの耳についている、あの子の耳飾りもそうだよお」
「え!? これって宝石とかガラスとかそういうのじゃなかったの!?」
「ある程度以上の力を持ったあやかしは、自分の妖力を結晶化して、その"器"に出来る限りの妖力を保存しておくんだよお。術で必要になった時とか、体調が悪いなーって時の補給用にね」
あやかしはヒトと違って、怪我や病気を薬だけじゃ治せないからねえ。
肩をすくめて笑むカグラちゃんの横で、渉さんが「あやかしも万能ではないんですね」と顎先に手をやる。
――って、ちょっと待って。
この耳飾りを手放しちゃった郭くんは、妖力の保存も、補給も出来ないってことじゃあ……?
(それであの時、雅弥が本当にいいのかとかなんとか言ってたんだ……!)
「ど、どうしよ! 私、知らないで貰っちゃって……っ! このままじゃ郭くん、体調悪くしても回復出来なくなっちゃう……!」
あたふたと耳飾りを外そうとした私に、カグラちゃんが「まあまあ」とのんびりほほ笑む。
「あの子が渡していくって置いて行ったモノだし、彩愛ちゃんが気にすることはないよお。もう一つは自分で持っていったしね」
それよりも、とカグラちゃんは軽やかに立ち上がって、
「今日はお葉都ちゃんの、記念すべきお披露目会だからね! 渉に用意してもらったケーキがあるから、皆で食べようー!」
コーヒーと紅茶、どっちがいい?
いつもの調子で尋ねるカグラちゃんに、私も暫し考えてから、思い直す。
(……うん。私は隠世に行けないし、これは、次に郭くんに会えた時に返そう)
――もしかして郭くんは、約束を"絶対"にしたくって、わざとこれを私に渡して行ったのかな。
一瞬、そんな疑問が浮かんだけれど、答えは郭くんしか知り得ない。
だからこの問いも"次"にとっておこう、と。そっと胸中に収めて、耳飾りから手を離す。
「それじゃあ、私は紅茶がいいなー。お葉都ちゃんは?」
と、渉さんが立ち上がった。
「では俺は、ケーキの準備をしてきますね。最後の仕上げを完成させてきます!」
「それでしたら、私も手伝いに……」
上り口へと向かう渉さんを追うようにして、即座に立ち上がるお葉都ちゃん。
気づいた渉さんは「いえ」と足を止めて、
「お葉都さんはこちらで待っていてください。お葉都さんのお祝いなんですから!」
「え!? これって宝石とかガラスとかそういうのじゃなかったの!?」
「ある程度以上の力を持ったあやかしは、自分の妖力を結晶化して、その"器"に出来る限りの妖力を保存しておくんだよお。術で必要になった時とか、体調が悪いなーって時の補給用にね」
あやかしはヒトと違って、怪我や病気を薬だけじゃ治せないからねえ。
肩をすくめて笑むカグラちゃんの横で、渉さんが「あやかしも万能ではないんですね」と顎先に手をやる。
――って、ちょっと待って。
この耳飾りを手放しちゃった郭くんは、妖力の保存も、補給も出来ないってことじゃあ……?
(それであの時、雅弥が本当にいいのかとかなんとか言ってたんだ……!)
「ど、どうしよ! 私、知らないで貰っちゃって……っ! このままじゃ郭くん、体調悪くしても回復出来なくなっちゃう……!」
あたふたと耳飾りを外そうとした私に、カグラちゃんが「まあまあ」とのんびりほほ笑む。
「あの子が渡していくって置いて行ったモノだし、彩愛ちゃんが気にすることはないよお。もう一つは自分で持っていったしね」
それよりも、とカグラちゃんは軽やかに立ち上がって、
「今日はお葉都ちゃんの、記念すべきお披露目会だからね! 渉に用意してもらったケーキがあるから、皆で食べようー!」
コーヒーと紅茶、どっちがいい?
いつもの調子で尋ねるカグラちゃんに、私も暫し考えてから、思い直す。
(……うん。私は隠世に行けないし、これは、次に郭くんに会えた時に返そう)
――もしかして郭くんは、約束を"絶対"にしたくって、わざとこれを私に渡して行ったのかな。
一瞬、そんな疑問が浮かんだけれど、答えは郭くんしか知り得ない。
だからこの問いも"次"にとっておこう、と。そっと胸中に収めて、耳飾りから手を離す。
「それじゃあ、私は紅茶がいいなー。お葉都ちゃんは?」
と、渉さんが立ち上がった。
「では俺は、ケーキの準備をしてきますね。最後の仕上げを完成させてきます!」
「それでしたら、私も手伝いに……」
上り口へと向かう渉さんを追うようにして、即座に立ち上がるお葉都ちゃん。
気づいた渉さんは「いえ」と足を止めて、
「お葉都さんはこちらで待っていてください。お葉都さんのお祝いなんですから!」