「まさか原口さん、自分が編集長なのをいいことに、レーベルを私物(しぶつ)()してるんじゃないでしょうね!?」
 私が詰め寄ると、彼は憮然(ぶぜん)と言い返してきた。
「するワケないじゃないですか、そんなこと。この企画には、他の作家さん達も編集者もみんな乗り気なんですから」
「へえ、そうなんだ……」
 〈ガーネット〉では考えられなかった、「読者を直接取材する」という(こころ)み。そりゃみんな乗るだろうな。
「――で、どれくらい応募が来たの?」
 私は訊いてみる。募集を出したわ応募は来ないわじゃ、企画倒れになってしまう。それで一番の被害を(こうむ)るのは、誰でもない言いだしっぺの原口さんだ。
「けっこうな数の応募がありましたよ。サイトへの投稿がザッと一〇〇〇件。郵送での投書が五〇〇件近く。合計で一五〇〇件くらい来ました」
「えっ、そんなに!?」
 レーベル全体への応募とはいえ、この数は驚きだ。
 でも、それを全部小説にするわけではなく、その中から一通ずつ選ぶことになると思うけれど。