ツッコみどころがいちいち細かい。まるで小姑みたいだ。
 でも、彼のそんなSなところも私は好きだったりして……。バカップルでゴメンなさい。
 ……それはさておき。
「――ねえねえ、原口さん。〝事実に基づいたフィクション〟ってアレでしょ? 朝ドラとか、あの『M』みたいな感じ?」
「はい、それと似たようなもんです」
 彼は頷く。
 私がたとえで出したのは、有名女性シンガーと彼女の才能を見出したレコード会社のプロデューサーとの恋愛を書いた話題作。TVドラマにもなった作品だ。
「先生にもエピソードは実際にあったことを書いて頂きますが、プライバシー保護のために固有名詞は変えて頂くことになりますね」
「まあ、そうなるよね」
 芸能人のストーリーならともかく、一般の女の子の恋愛を小説にするのだ。そこはちゃんと配慮してあげないといけない。

 ――武下紗希ちゃんが通っている都立晃輪高校は、世田谷(せたがや)区にある。
 閑静(かんせい)な住宅街の外れに大きな校舎と広いグラウンドが見えてきた。
「……あ、ここですね。晃輪高校」