船で、
このクルーズギャラリーの
留守を護る、
ヨミと シオンは

明日の 石工房体験を 案内して、
ゲスト達を 無事に
今日の 宿泊先へ 送った。

そして、
オーナーのハジメは
まだ 戻って
来ていない。

「先輩ー!どうします?
キャプテンは さっき お風呂から
戻って来られましたよー。」

次は、
留守番の 自分達も
食事を 済ませて、
バスタイムに しなくては
いけない。

「先に、ご飯と お風呂いっちゃ
っていいんじゃないですー?」

少し 船室で 休んだ事で、
気分を持ち直した、
シオン。

船には、船室が3つあり、
ヨミと シオンは 相部屋だ。

全快して すぐに
ゲストの 対応を 始めた
シオンは、ヨミと共に、
ゲストを 送り出し、
今 ジャグジー テラスから
叫んでいる。

それを聞いて、
サロンの片付けをした ヨミが
返事をかえす。
夕方の潮風は、少し 冷えてきた。

ジャグジー テラスが ある
この フロアは、
半分 、開口している。

「仕方ないわよね。海から見えた
レストランに、連絡するわ。」

ヨミが、電話をかける間に、
シオンの方も ハジメに
先に 自分達の予定を
進める事を 電話に 送る。

ギャラリーオーナーである
ハジメは 割りと自由に仕事を
するタイプだが、

今回は 珍しく、 ヨミやシオンに
預けていくのが 多い気がした。

「それにしても、今回はさすがに
海外ゲストが 多いですねー。
こんなに、日本の芸術祭 が
海外で知られてるのは、
意外でしたよー。」

シオンは、『キャプテン』と呼ぶ
クルーザー運転手に、
声をかけて、ヨミと ステップに
降りる。

「そうよね。あのゲスト様は、
なんでも、有名アーティストの
心臓の音が聞けるからって、
わざわざ、芸術祭をしている
この島に 来たって言ってたし。
海外で 紹介が ずいぶん
されてる 証拠ね。」

それに してもと、
シオンは ステップから、
自分達が 乗るクルーザーサイドを
改めて 見る。

サイドボディの ライトが点いて
夕方の海を 明るく照らす 姿。
ここが
瀬戸内海だと 忘れそうになる。


「海外で収録した 心臓の音を、
聞く為に 日本に来るなんて
本当に セレブですよ。」

まあ、自分達も セレブ社かあー。
シオンは、デッキから
手を 振る お爺様なキャプテンに、
手を 振り返した。

港に 停泊していると、
珍しさで、人が集まってくる。
前の島でも、そうだった。。

「本当に。まあ、お陰様で
私たちも、船で旅行とか、
美味しい 地元食材の お料理が
食べれるわけよ。後輩ちゃん」

とくに、
この船は、クルーザーというより
『メガヨット』の分類で
深水に柔軟な 珍しい形だ。

もとは 性能のいい 日本の 漁船を
海外企業が、リメイクして
最近は よく逆輸入されていると、
教えられて 驚いた。

さすが、
オーダーメイドで 船を
デザインする ような国だと
昨日、初乗りした時は 発想に
シオンも 弱冠 呆れた。

なにより
操縦している
お爺様な キャプテンも、
もとは 漁師という。
それは、色々聞けて 良かった。

漁船の 操縦機関部は
そのままなので、
よく知る
日本沿岸部の 海域を
お爺様 キャプテンは
自由に 散歩してくれる。
もと 漁師は 頼りになる。

「しかし、オーナーは、よく
こんな船のツテ ありますね。」

今さらながら、
自分の 上司の 有能 さに
脱帽だ。

「オーナーが 言うには、もっと
大きな『スーパーメガヨット』に
なると、ヘリポートも、オーダー
オプション出来るそうよ。」

いや、それヨットなんですか?

シオンは、ヨミにつっこんで、
桟橋に出る。

船底 付近にある方の デッキは、
本来 ジェットスキーや、
テンダーボートを 搭載できる。

なのに なぜか、
ハジメは、
オープンカーを 載せてきた。

「オーナー、あのオープンカーで
いったい どこまで 行ってるん
ですかねー。帰えりもなし?」

船には、シャワーも
設備されているが、どうしても
共有になり、広くは ない。

船で 夜に 停泊する 島には、
なるべく 日帰り入浴がある 島を
ハジメは 選んでいた。

漁師が 多い 島は、
意外に 貰い湯ぐらいの
銭湯が あったりすると、
この旅で わかった。

最近まで 五右衛門風呂が
多かったともいう。

少ない湯船で 肩までつかれる
五右衛門風呂は、
水が 限られる 島では
重宝される のだとか。

その点
この島は 水を含む『豊島石』の
性質で、自然雨を 貯めやすく、
地中の石を 天然のろ過装置に
ミネラルの 多い

不純物を 取り除いて

清水を 湧かせる。

瀬戸内海の島には
珍しく、棚田や 溜池が多く
豊かな 植物地帯もある。

江戸時代 林業が
盛んだったのは 驚異だ。

西日本でも 屈指の材木商が
拠点し、その栄華は
樹齢 600年のソテツを
当時の 琉球から
島に 運んだ というほどに。

『海の道』

島は 船への積込がしやすく
帆船技術の いかんで
海を
縦横無尽に 走ったのだろう

島の材木 販売範囲の広さが
これでも わかる。


「ほっときましょ。
ディナーをしたら、ゆっくり
大きな お風呂が あるところで、
羽を 伸ばしたい わよね。」

さすがに、途中まで 1人で
ゲストの 対応したせいか、
ヨミは グリグリっと
首を回して、
ささやかな 願望を 口にする。

「先輩、明日は 朝から ゲストを
石の工房に 案内 ですよね。
その前に、1度 あの 石の浜に
降りても いいですかー?」

シオンは、
かつて 石職人の小屋が並んだ浜に
降りて みたいと 言う。

「まあね、レストランから
見た時、なんだか独特の 風景は
興味あった けど。そんなに?」

浜には、
昔に
石工職人が 残した 石や、
加工品が
そのまんま ゴロゴロと
取り残されて
波に 洗われて いたのだった。

ミネラル多く 栄養ある 水が
島から 海に流れて
『ママカリ』が沢山
捕れる 豊かな島、

自給自足のシステムが
あった 島の 別の顔。

「古代人の 貝塚があって、石工
職人が放置した 石があるって、
やっぱり 見ておきたいじゃない
ですか! なんか 手頃なヤツ !
遺構的な お土産がわりに!
あと、キャプテンに ビール
差し入れしましょ!空海!」

電気自動車は、レンタルに
全部 出払っていたので、
電動自転車を 借りる シオンに、

あら、シーガラスならぬ
シーストーンな モノを拾うのねと、言い

「後輩ちゃん、飲酒操船は
取り締まり 対象だから ダメよ」

ヨミが 残念そうなモノを
みる顔で 伝つつ

自分も シーストーン探しを
密かに 楽しみにする。

『この島』で 『拾う』 それは
とても
極上の 『お土産』になりそうだ。