船は、
新たな ゲストを乗せて、
島の北側を ゆっくり 進む。
今日、クルーズギャラリーに
乗船するゲストも
海外ゲスト。
そして、国内常連客。
オーナーであるハジメが、
合流するのは まだ後である。
豊島は、中央にそびえる
壇山を境に、
北側と南側で、
風景が異なる 。
まるで
四国島を
縮小したような
その 特色は
北側は緑が濃く、
山裾に広がる平地が
独特の、
里山の世界を作る。
今、まだ合流しない
ハジメオーナーの 代わりに、
ヨミが
ゲストの出迎え、
海を 散歩する クルーズ船の
ギャラリーサロンを案内する。
今回企画テーマは
瀬戸内海での芸術祭期間中もあり
『マドンナ・ブルー』。
碧と、女神のイメージを
彷彿とさせる品が 揃えられている
「瀬戸内海は、島の至るところで
目にします様に、巨大観音像
キリシタン遺構などが
多くありますが
この豊島も キリシタン
文化に 纏わる モノがあります」
ヨミは ゲストに 語りながら
石の女神の 前に立ち、
「豊島石です。
キリシタン灯籠に使われた
豊島石は、
柔らかく、粘りある粒子で、
手彫り加工しやすい特質から
多く 採掘され 流通し、
かつては、米 以上に
島の財源と なった 石です。」
先ほどの
産廃処理見学棟で、
体調を崩した 後輩を、
船室に 休ませ、
ヨミは
1人で ゲストに 応対 している。
が、特に 問題ない。
『豊島千件、石工千人』
江戸時代から 石の島 としても
この島は、名を馳せている。
『御影や、花崗岩ではないの?』
国内の 常連客から 質問される。
「豊島石は、『角礫質凝灰岩』
なのです。
とても、柔らかく、
水に 浸されやすい。
ところが、熱に強いので 灯籠に
向いているんですね。
水を 石に 含みやすい ので、
苔に むしやすく、味が出ます。
桂離宮や 住吉神社、大阪城で
使われて 来ましたし、
今も庭園に
重宝される 石なの ですよ。」
説明をしながら、
ヨミは オーナーの連絡を待つ。
『"唯一 の、豊島石の 体験工房
なんだけどねぇ、営業してるか
先に見て 来ようと思う~。"』
まあ 何かしらの用事が、
オーナーにも 有っての ついで
現場 確認なのだろうが。
ヨミは、
1つ息をつく。
国内の 常連客は、
華道を 嗜まれるから、
鉢に 興味を、持たれるはず。
島の 旅時間を 過ごす
思い出にと、
石の 手彫りを 提案するのだろう。
ゴツゴツとした
自然石の 風合いを
残した鉢に すれば、
和の インテリアグリーンになる。
水を含む 性質から、
特にシダ植物とも 相性がいい。
苔がつけば
なおさら 詫び錆び だろう。
巡礼好きの 海外ゲストにも、
手彫りは 良い体験になる。
『大谷石の、地下の採掘場跡
みたいな場所が あるの?』
海外ゲストは、きっと栃木の
採掘跡みたいなと、イメージして
聞いているのだろうと、
ヨミは 感じ、
「そうですね、
豊島石の 採掘場も、
縦穴15メートルに 奥は
250メートルで 4つが並び、
とても 不思議な 雰囲気で
面白い様です。でも今は
一般に 開放されて ません。」
海外ゲストは 残念そうだ。
「ですが、島には、珍しい石垣、
香川で最古の鳥居、至るところ
石が用いられ、雰囲気が
ありますよ。
島で、首のない地蔵 や。
石の蘭塔を
覗き見する 恵比寿像も
ありますし、イースター島以上
ミステリアスに 感じれます。」
ここで、オーナー直伝の
魅惑のウインクを
ヨミは
ゲスト達に、してみせた。
島の 南部の岸には、
古い共同墓地があり、
もちろん、豊島の墓石が並ぶ。
それは
まるで、ストーンサークル。
この墓地には、
十字の刻まれた
切支丹墓がある のだ。
小さな島で、
隠れれたの だろうか。
けれど、
他の島のような ひどい弾圧は
記録では 見つからない。
また、
島の 恵比寿像 は
『盗んできた恵比寿には
特別に 利益がある』といわれ、
度々盗難にあったからか、
豊島石の 重い 屋根の祠や、
覗き穴から参拝する ような
蘭塔に 入っている。
追いやられたり、
盗られたり。
石1つにも、
様々なストーリーが
ある 島。
大袈裟ではなく
どこまでも
考え深い 島で、計り知れない。
そこに、ヨミの電話画面に、
連絡内容が 浮かび上がる。
それを、見て
「例えば、たくさん島に ある
『首なし地蔵』に首を 掘って
あげると、願いが叶うという
話もあるのですよ。
どうでしょう、手彫りなど
やってみませんか?」
そう言いながら、
ヨミは 空を 手で掘る真似をした。
あ、そういえば
船室で 寝てる 後輩ちゃんが
面白い事を アドバイス
くれていたんだわ。
「と、
その前に、ほどなく
お泊まりになる
お宿の 浜が 見えて来ました。
宿の近くに、オーシャンビュー
レストランが あるので、
そちらで、お食事をされる事に
なりそうですが、」
海外のゲストが 泊まる
1棟貸しの 宿は、
キッチンシンクや 浴槽
玄関にまで、ふんだんに
豊島石を 使って
建てられている。
船の前に
緑 一色の島と、
真っ白で、真一文字の 横長な
建物が 見える。
紺碧の海に 浮かぶ 緑の島。
真ん中には
テラスとして
黒く 四角い口を 開けている。
「ご覧下さい。
かつて、千人の 石工がいる
千件の 石屋が並んだ浜に、
建てられレストランが、
まるで
緑の古墳に 佇む石の祠 みたい
だと 思いませんか。
それは、女神が 統べる
この 海から だけ見える、
遺跡の島の
もう1つの顔 なんです。」
皮肉かな、
豊島石。
近代建築の コンクリートの台頭と
アジア海運技術の 向上による、
安価石材の輸入で、
千人いた 石工は
島から 消えた。
新たな ゲストを乗せて、
島の北側を ゆっくり 進む。
今日、クルーズギャラリーに
乗船するゲストも
海外ゲスト。
そして、国内常連客。
オーナーであるハジメが、
合流するのは まだ後である。
豊島は、中央にそびえる
壇山を境に、
北側と南側で、
風景が異なる 。
まるで
四国島を
縮小したような
その 特色は
北側は緑が濃く、
山裾に広がる平地が
独特の、
里山の世界を作る。
今、まだ合流しない
ハジメオーナーの 代わりに、
ヨミが
ゲストの出迎え、
海を 散歩する クルーズ船の
ギャラリーサロンを案内する。
今回企画テーマは
瀬戸内海での芸術祭期間中もあり
『マドンナ・ブルー』。
碧と、女神のイメージを
彷彿とさせる品が 揃えられている
「瀬戸内海は、島の至るところで
目にします様に、巨大観音像
キリシタン遺構などが
多くありますが
この豊島も キリシタン
文化に 纏わる モノがあります」
ヨミは ゲストに 語りながら
石の女神の 前に立ち、
「豊島石です。
キリシタン灯籠に使われた
豊島石は、
柔らかく、粘りある粒子で、
手彫り加工しやすい特質から
多く 採掘され 流通し、
かつては、米 以上に
島の財源と なった 石です。」
先ほどの
産廃処理見学棟で、
体調を崩した 後輩を、
船室に 休ませ、
ヨミは
1人で ゲストに 応対 している。
が、特に 問題ない。
『豊島千件、石工千人』
江戸時代から 石の島 としても
この島は、名を馳せている。
『御影や、花崗岩ではないの?』
国内の 常連客から 質問される。
「豊島石は、『角礫質凝灰岩』
なのです。
とても、柔らかく、
水に 浸されやすい。
ところが、熱に強いので 灯籠に
向いているんですね。
水を 石に 含みやすい ので、
苔に むしやすく、味が出ます。
桂離宮や 住吉神社、大阪城で
使われて 来ましたし、
今も庭園に
重宝される 石なの ですよ。」
説明をしながら、
ヨミは オーナーの連絡を待つ。
『"唯一 の、豊島石の 体験工房
なんだけどねぇ、営業してるか
先に見て 来ようと思う~。"』
まあ 何かしらの用事が、
オーナーにも 有っての ついで
現場 確認なのだろうが。
ヨミは、
1つ息をつく。
国内の 常連客は、
華道を 嗜まれるから、
鉢に 興味を、持たれるはず。
島の 旅時間を 過ごす
思い出にと、
石の 手彫りを 提案するのだろう。
ゴツゴツとした
自然石の 風合いを
残した鉢に すれば、
和の インテリアグリーンになる。
水を含む 性質から、
特にシダ植物とも 相性がいい。
苔がつけば
なおさら 詫び錆び だろう。
巡礼好きの 海外ゲストにも、
手彫りは 良い体験になる。
『大谷石の、地下の採掘場跡
みたいな場所が あるの?』
海外ゲストは、きっと栃木の
採掘跡みたいなと、イメージして
聞いているのだろうと、
ヨミは 感じ、
「そうですね、
豊島石の 採掘場も、
縦穴15メートルに 奥は
250メートルで 4つが並び、
とても 不思議な 雰囲気で
面白い様です。でも今は
一般に 開放されて ません。」
海外ゲストは 残念そうだ。
「ですが、島には、珍しい石垣、
香川で最古の鳥居、至るところ
石が用いられ、雰囲気が
ありますよ。
島で、首のない地蔵 や。
石の蘭塔を
覗き見する 恵比寿像も
ありますし、イースター島以上
ミステリアスに 感じれます。」
ここで、オーナー直伝の
魅惑のウインクを
ヨミは
ゲスト達に、してみせた。
島の 南部の岸には、
古い共同墓地があり、
もちろん、豊島の墓石が並ぶ。
それは
まるで、ストーンサークル。
この墓地には、
十字の刻まれた
切支丹墓がある のだ。
小さな島で、
隠れれたの だろうか。
けれど、
他の島のような ひどい弾圧は
記録では 見つからない。
また、
島の 恵比寿像 は
『盗んできた恵比寿には
特別に 利益がある』といわれ、
度々盗難にあったからか、
豊島石の 重い 屋根の祠や、
覗き穴から参拝する ような
蘭塔に 入っている。
追いやられたり、
盗られたり。
石1つにも、
様々なストーリーが
ある 島。
大袈裟ではなく
どこまでも
考え深い 島で、計り知れない。
そこに、ヨミの電話画面に、
連絡内容が 浮かび上がる。
それを、見て
「例えば、たくさん島に ある
『首なし地蔵』に首を 掘って
あげると、願いが叶うという
話もあるのですよ。
どうでしょう、手彫りなど
やってみませんか?」
そう言いながら、
ヨミは 空を 手で掘る真似をした。
あ、そういえば
船室で 寝てる 後輩ちゃんが
面白い事を アドバイス
くれていたんだわ。
「と、
その前に、ほどなく
お泊まりになる
お宿の 浜が 見えて来ました。
宿の近くに、オーシャンビュー
レストランが あるので、
そちらで、お食事をされる事に
なりそうですが、」
海外のゲストが 泊まる
1棟貸しの 宿は、
キッチンシンクや 浴槽
玄関にまで、ふんだんに
豊島石を 使って
建てられている。
船の前に
緑 一色の島と、
真っ白で、真一文字の 横長な
建物が 見える。
紺碧の海に 浮かぶ 緑の島。
真ん中には
テラスとして
黒く 四角い口を 開けている。
「ご覧下さい。
かつて、千人の 石工がいる
千件の 石屋が並んだ浜に、
建てられレストランが、
まるで
緑の古墳に 佇む石の祠 みたい
だと 思いませんか。
それは、女神が 統べる
この 海から だけ見える、
遺跡の島の
もう1つの顔 なんです。」
皮肉かな、
豊島石。
近代建築の コンクリートの台頭と
アジア海運技術の 向上による、
安価石材の輸入で、
千人いた 石工は
島から 消えた。