島ってのに、来たのは
やっぱり初めてだなと、
ユキノジョウは 路線バスに
乗せられて、ふーっと思う。

「ユリは、小豆島、
来たことある?」

ユキノジョウは、
アコの向こうに座わって、
外を見てた、ユリヤに聞く。

「わかんないけど、
初めてだと思う。」

「ふーん」

「あ、海来た!ユリヤちゃん、
そっち行く!」

アコは 隣のユリヤと席を
かわって、窓にはりついた。

さっきの港も 海だろう?って
思うけど、隣どうしになった。
まあ、いっか。

「当分バスだから、皆んな 少し
寝てたら?船じゃ、
寝にくかったでしょ。」

アコと 反対側の 窓際に座る、
副女さんの 声がした。

「副女さん?バスどれ
くらい乗るん?」

ユキノジョウとの間に、
荷物を 置いて座る 母親は、
日焼け止めを 塗り直し、
バス、涼しーとか しゃべる。

今、ユキノジョウ達は
路線バスの1番後ろに、
1列に 並んで 座っている。

醤油船の波止場は、

醤油の記念館や 工場のある
路地を、まっすぐ海に
歩いたところ だった。

ユキノジョウ達は、
朝ご飯や メロンを食べて、
蒸気が 所々シューシュー する、
路地を 戻って 記念館を
30分だけ、見た。

『せっかくだから、夏休みの自由
研究にしときな。』

副女さんは そう言って、
醤油の パンフレットも
くれたけど、
社会見学 みたいでイヤだ。

林間学校 じゃなけりゃ、
子ども会の キャンプでもない 旅。

わかってない。

そこから 路線バスに乗って、
中山って とこまで 行くらしい。

まだ 早いからか、
バスは余り 止まらないで、
走るから、他の人が 乗ってない。

「今ね、瀬戸内の島の いろんな
ところを使って国際芸術祭がされてるんだけど、今回のボランティアは その お手伝いね。」

たまに、バスの窓から
南国の木っぽいのが 見える。
オリーブの木だって、
窓から、教えて もらう。

副女さんが 話している途中で、
袋に 入ったままの なにか布を
出してきた。

「はい、1から5までの番号を
1つだけ、言って下さい。
アコちゃん。」

「じゃ!3!」

アコに、袋の1つを渡す。

「次、ユキノジョウくんかな。」

言われた けど、片手の平で
ユリヤを 示して、
ユキノジョウは 先を ゆずる。

「じゃあ、ユリヤは?」

「5番。」

「はい、これね。」

さっきと 同じように
副女さんが ユリヤに、
袋をわたした。

アコがもう中身を 出して、

「パンダの布だ!」

と、ピンクに パンダの柄の、
これは 手拭いだな、出してる。
ユキノジョウは、

「じゃあ、オレ、1っ番ー。」

と、袋をもらって 開けると。

「なに?新幹線?」 シブ。

副女さんが
残りの袋の1つを
ユキノジョウの 母親に 渡す。

「あ、これ!フェリーの
手拭い?!オッシャレ!」

ユキノジョウの 母親は、
バーンと、手拭いを横に広げた。

たしかに、船の名前と絵が
色版画 みたいな、手拭い?だ。

「はーい。もともと、手拭いは
3枚だけ 持って きてたから、船の中で 追加の 2枚買ったんよね。
ねー、おしゃれよね、
フェリーの手拭いも。」

副女さんも、袋をあけて、
フェリーの手拭い 見せてくれる。
うん。船の お土産 手拭いでも、
いい感じ だな。それも。

「ユキノジョウくんと、ユリヤのは、舞妓さんが 新幹線に乗ってる
手拭いと、舞妓さんが ラグビー
してる手拭い。ボランティアは
暑いから、手拭いを 冷やして、
頭に ちゃんと 巻いときな。」

そして、手拭いを 頭にお手本で、
巻いて 見せてくれた。
あと、見慣れた Tシャツを
投げて くれるし。これ?!

「副女さん、用意いいー!PTA
シャツー。」

バスは、始めは 潮っぽい 港町を
走っていて、
所々海が 見える坂を
上り下り、行っていた はず。

それが、キレイに、
海ぞいを 走り出して いる。

「部屋に 予備が まだあるから、
持ってきたよ。
皆、これ 着替えてね。」

「え、ここで!」

アコが とんでもない顔を する。

「プールのタオル、首まで上げ
たら、着替えれる でしょー。」

ユキノジョウの母親が 無茶苦茶だ。
へんだろ、バスの後ろで、
みんな『ミノムシ着替え』なんか
出来るか!!

見ろよ!ユリが
ヒソウな 顔してるから!

あんたらには、
まだ 子どもかも だけど、
オレらは もう 思春期 だって、
保健でも やってるん だよ!

「アタシ達も、『ミノムシ』で
着替えるかー♪」

やめろ、副女さん!
南国だからか!浮かれてんのか!

あぁ!
見ろよ、次のバス停に
人が 待ってるだろ!!くそー