30分後。今日の子がきた。名前と顔を確認して自分たちの仕事場に戻る。

 「汚いけど、そこにある椅子に座ってもらえるかな?」

その子は静かにそこに座る。

「確認のためにもう一度名前と、年齢を言ってくれるかな?」

「田中幸助。13歳です。」

「はい。確認しました。ここでの会話は全てシークレットになってます。ないとは思いますがここで暴れた場合は自分が力ずくで制圧するのでよろしくお願いします。」

自分はその子の情報が書かれた資料に目を通す。

「いじめかい?」

幸助くんの反応はない。

「隠さなくていいんだよ。辛かったことも、悲しかったことも。自分たちはそこまで干渉するつもりもないし、責め立てることもしない。」

静かにゆっくり首が傾く。

「そっか。辛かったね。」

今度ははっきりと首が縦に傾く。

「そっか。ここでは君みたいな年代の子がよくくる。自分から命を経ってしまた子達の多くはいじめが原因だった。君はその子たちと同じ裁きを受けることになる。辛いことだけど覚悟はいいね?早速だけど始めるよ。」

「そんなサクサク進んでいいんですか?」

「問題ないよ。ここでの判決は決まってるから。どうなっても結果は変わらない。死に方が裁きの対象なんだから。」

幸助くんは恐怖からか縮こまっている。

「安心して。痛いことはしない。怖いこともない。ただ、君に1日だけ時間をあげる。生前の世界に戻って、いろんな人と関わってもらう。でも、ちょっと違うのは君がある行動をとっていたということだけ。今回の場合はいじめを他の人に告発してたってこと。それ以外は何も変わらない日常だ。その後のことは、その時に話す。」

幸助くんは困惑しているようだった。

「難しかったかな?簡単にいうと、もう一度君は、生き返るってこと。1日だけね。その世界では君が抱えていた問題が解決されていて、君は死んだことにはなっていないって感じかな?」

「もう一度だけ、生き返ることができるの?」

初めて幸助くんが口を開く。

「そうだよ。でも、1日だけ。」

「そのあとは?」

「ごめん。ここでは言えないんだ。決まりでね。じゃあ、早速はじめたいんだけどいいかい?」

幸助くんはうなずいた。

「じゃあ、俺の後ろにある部屋についてきてくれるかな?しおりもきてくれ。」

自分は椅子から降りて、机の中から鍵をとり、後ろの扉を開けた。