今日の仕事は中学校一年生の男子の裁判だ。裁判を受ける側は、死んだ年齢のままで裁判を受ける。見た目が自分に近くなればなるほど複雑な思いがある。なぜ?とか、可哀想とかそういうことを思ってはいけない。一応ここでは罪人であることは変わらない。何歳であれ平等に裁きを受けさせるのが自分たちの仕事だ。横でその子の資料を見ていたしおりの顔が暗い。

「こんなに若くして亡くなってしまった子を裁判にかけなきゃいけないのは少し心苦しいですね。」

「こんなことの連続だぞ。ここでは罪人なんだから凛とした態度で対応しなきゃいけない。死んでしまったら年齢は関係なく、扱われるからな。ここでは、生前いくつまで生きたかなんて気にしちゃいけない。特にうちはな。若くして自殺に走ってしまうことが多いからな。特に今日の子みたいな年齢層は多いぞ。新しい環境になれなかったりとか、多感な時期で誰にも相談できなかったみたいなことが多いからな。」

「そんな子でも裁かなききゃいけないんですか?」

このままではこいつにここの仕事は耐えきれない。

「お前は何歳まで生きた?」

「私ですか?私は72歳くらいまでです。」

「いろんな人の死を見てきたろ?」

「そうですね。親の死。友達の死。大切な人も自分を置いて逝ってしまいました。」

「そこにいた人間が自ら死を望むように見えたか?」

「そんなわけないじゃないですか!!」

声を荒上げる。

「だからだ。どんなことがあったとしても自ら死を望んで、行動してはならない。お前みたいに自分を失って悲しむ人がいるからだ。ここに来る前の研修会で言われなかったか?転生した命は前世の行動に少しだけ引っ張られる。例えば、犯罪を犯してしまった人の前世を持ってしまった人が少なからず犯罪を犯してしまうということだ。だから、罰を受けて改心したのちに輪廻の流れの中に返す。自殺も一緒なんだ。前世自殺をした人間もその影響を受けて同じ行動をとってしまうことがある。だからこそ、裁かなきゃいけない。でも、この国には自殺に対する法はない。だから、ここで俺たちが代わりにやらなくちゃいけないんだ。お前みたいに傷つく人が出ないために。」

「・・・。」

しおりは黙ってしまった。

「なれろとは言わない。逆になれてはいけない。自殺をした人間がどんな裁きを受けるかはこれからわかる。しっかり受け止めて覚えておくんだ。決して忘れてはいけない。時間だ。じゃあ、初仕事に行こうか。」

自分は目の前にある扉を開けた。