人間の生命力は計り知れないものがある。ここでいう生命力というのは、1つのことに一喜一憂したり、その人の可能性だったり。その人の生きるエネルギーだけでなく、その人が叶えられるはずだった夢に対するエネルギーだったりする。ということは、生前に夢をかなえて安全燃焼した人間は生命力を使い切って、天界での生活は短くなり、すぐに転生する。本来ならそうして欲しいのだが、そんなことも言ってられないのがこの世界で、大半の人が夢を叶えられずに一生を終えてしまう。たとえ叶えたとしても完全燃焼できるとは限らない。だから、いつの時代も天界には人が溢れている。

「新しい世界を作るってどういうことですか?」

しおりが聞いてくる。

「言葉そのままだよ。この世界とは違う世界を作るんだ。全く同じ場所で、全く同じ人間が住む世界を作るんだ。」

「そんなこと・・・。」

「できるんだ。それほど人間の生命力は強くて、影響力がある。」

どういう原理かは知らないが、自分がこの提案をお上の方にしたら技術者が作ってくれた。催眠とか寝ているときに見る夢ではなく、本当に世界を作る。ただし、その世界は当事者の周辺のみに限られる。それが世界を保つための条件らしい。その世界の再現度はその人の残っている生命力の量に比例する。多ければ多いほどリアルになり、天界にいた記憶を失ってしまう。幸助君の場合は若くして自殺したので多くの生命力が残っている。おそらくだが、天界にいた記憶なんて残っていない。