24時間前。

「じゃあ、しおりにはこのあとどうなるのか説明をしようと思う。」

自分はしおりに、ここでの裁きの内容を説明し出した。

「日本の方では罪人ではない彼を直接的な罰を受けさせることはできない。でも、君も講習で習ったと思うけど、天界は間違ってしまった魂をそのまま輪廻に戻すことができない。本来、裁判が受けられる犯罪を行ったものは苦痛とともに自分の行いを後悔させる。そして、その人の生命力が切れるまでその苦痛を与えることになっている。」

いわゆる地獄というやつだ。そこでは裁判とともに罰を受けさせて、反省を促し、生命力が尽きたら輪廻の流れに戻す。反対に犯罪を犯していない人は、生命力が切れるまで天界でゆったりとした時間を過ごし、時間がきたら輪廻の流れに戻すことになっている。なぜ生命力が切れるまで時間をかけるのかというと、生命力が残っている人間を戻してしまうと、前世の記憶が残り転生先の人格形成に問題が起きてしまうからだ。

「でも、どうにかして生命力を削る必要があったんだ。だから、ここでは、彼の生命力を使い切るためにその膨大な大きさの力で別の新しい世界を作ることにした。」
人間の生命力は計り知れないものがある。ここでいう生命力というのは、1つのことに一喜一憂したり、その人の可能性だったり。その人の生きるエネルギーだけでなく、その人が叶えられるはずだった夢に対するエネルギーだったりする。ということは、生前に夢をかなえて安全燃焼した人間は生命力を使い切って、天界での生活は短くなり、すぐに転生する。本来ならそうして欲しいのだが、そんなことも言ってられないのがこの世界で、大半の人が夢を叶えられずに一生を終えてしまう。たとえ叶えたとしても完全燃焼できるとは限らない。だから、いつの時代も天界には人が溢れている。

「新しい世界を作るってどういうことですか?」

しおりが聞いてくる。

「言葉そのままだよ。この世界とは違う世界を作るんだ。全く同じ場所で、全く同じ人間が住む世界を作るんだ。」

「そんなこと・・・。」

「できるんだ。それほど人間の生命力は強くて、影響力がある。」

どういう原理かは知らないが、自分がこの提案をお上の方にしたら技術者が作ってくれた。催眠とか寝ているときに見る夢ではなく、本当に世界を作る。ただし、その世界は当事者の周辺のみに限られる。それが世界を保つための条件らしい。その世界の再現度はその人の残っている生命力の量に比例する。多ければ多いほどリアルになり、天界にいた記憶を失ってしまう。幸助君の場合は若くして自殺したので多くの生命力が残っている。おそらくだが、天界にいた記憶なんて残っていない。