命の価値に差はないとは思う。でも、それは社会的に見た時で、一個人では命の価値は大きく違う。自らの命もそう。自らが生きている意味を持てなかったら、生きることは辛くなる。自分が勤める天界での仕事はそのことを深く考えなきゃいけなくなる。

今日から新人が来るらしいが、いろんな部署がある天界での仕事の中でわざわざこんなところを希望する人間がいるのが不思議だ。仕事は1日に1人しか進まないし、判決は気持ちのいいものではない。基本的にここでは一つの判決しか出さない。それがいいものでは決してない。

ドアの叩く音がする。新人が来たみたいだ。俺は扉を開けて、新人を招き入れる。扉を開けて、目の前にいたのは15、6の女の子だった。ちなみに、天界で働く人間の姿は、生前で1番思い出の濃かった時期の姿になる。その方が、仕事に打ち込みやすくなるかららしい。ちなみに自分の姿は16歳くらいの子供だ。実際には19まで生きた。

「はじめまして。しおりと言います。今日からよろしくお願いします。」

新人らしく元気のいい挨拶だった。

「よろしく。ようこそ。日本の自殺課へ。」

日本には自殺を裁く法がない。本来、自殺は宗教的にはアウトのことが多いため、宗教を信仰している人ならその教祖様が裁いてくれるのだが、信仰の自由が認められている日本には宗教を信仰していない人もざらだ。そのことに困った天界の人々が、このような部署を作り、当時下っ端だった自分に仕事を押し付けた。裁きの方法は自分で決めて、天界の上方部に許可をもらった上で行っている。その方法が問題で今まで誰もここにはこなかった。この子が来るまでここは自分1人で回していた。

「わかっていると思うけど、ここは俺と君だけ。仕事の量は1日ひとりまでだから、そこまで大変じゃない。休みはしっかりあるけど、初めてだとかなり精神的に来るものがあるから気をつけるように。」

新人らしく、しっかりとメモをとっている。

「ここはできてまだ、200年くらいだから比較的新しいところで、決まっていないところも多いからよろしく。わからないところがあったらその都度俺に質問してくれ。今日はまず仕事の内容を覚えてもらうために俺のことしっかりと見ておいてくれ。」

一通り説明を終えて通常の業務に移る。