「これ欲しい。」

夏帆が立ち止まったところには、夏帆には少し大きく、僕にはぴったりな大きさのシンプルなパーカーだった。中学生なので手持ちはあまり多くはないが、値段はかなりリーズナブルなものだった。

「そうか。なら、これ買おうか。」

僕は一つだけパーカーをとり、会計に行こうとすると、夏帆は僕の袖を握った。

「違う。私も買うからもう一つ。」

夏帆は背伸びをしながらギリギリ届くか届かないかのところで頑張っていた。夏帆がなぜもう一つ欲しがっていたのかはわからなかったが、必死に届かない姿はしばらく見ていたかった。その姿を見れなくなるのは少しもったいない感じがしたが仕方ないので自分が取ることにした。パーカー2つを会計に持っていく。なぜか定員さんがニヤニヤしている。

「ペアルックですか?」

その言葉は聞いたことがあったがどういう意味かは知らない。僕が少し答えに困っているとそれを察した夏帆が、

「そうです!」

と、少し食い気味に応えた。

「そうですか。仲良しなんですね。」

店員さんは笑顔で答えた。2人分の値段を払い、店をでた。