体育の時間になり、女子と合流してから授業が始まる。夏帆はぶかぶかの自分の長袖の体操着を大事そうにきていた。周りの女子に囲まれていて、人とのコミュニケーションが苦手なのか戸惑いながら1人1人の話を聞いていた。夏帆も自分と同じで、今までこんなに人から注目を浴びた事がなかったのだろう。
「何、彼女の方ばかり見てんだよ。」
クラスの男子に話しかけられた。
「気になるなら行ってやれよ。」
なぜか、背中を押されて夏帆のほうに向かう。すると、女子の方から、
「彼氏さんがきたよ。」
と言われて恥ずかしがりながら自分に近寄ってきた。
「ぶかぶかだね。」
「そうだね。でも、これでよかった。」
ぶかぶかの体操着の袖を顔に当てて、匂いを嗅いでいる。
「落ち着く?」
好きな人の匂いが落ち着く気持ちがわかるので聞いてみた。
「うん。落ち着く。」
「そっか。よかった。」
夏帆の頭に手を置きながら自分はささやく。夏帆は長すぎる袖で自分の顔を隠した。
「そこの2人。もうそろそろ始めるけど良いか?」
体育の先生がクラス中の注目を集めている自分たちに話しかけてきた。気づけばすでに授業の時間は始まっていて、クラスメイトはこっちを向きながらも整列していた。まだこんな人数に注目されることに慣れていない僕たちは赤面しながら自分の入りについた。
体育の内容は体育館を二つに分けて、男子はフットサル、女子はバレーボールだった。部活には入っていなかったが小学3年生からずっと強豪サッカークラブでサッカーをしていたから、そこそこ自信はある。クラスメイトにはもちろんサッカー部がいるが、そこまで強い学校ではないので実力はどっこいどっこいだと思う。
中学校の体育は基本的にその競技の部活に入っている人間が主導権を握る。どんな目立たない奴もその部活に入っているだけで周りから引っ張りだこになる。もしくは、部活の人間だけ集めてドラフトのようなことをする。例によってちょうど半々になるようにサッカー部のやつが別れて、ドラフトが始まった。運動部のやつから選ばれていく。帰宅部の僕がサッカーをしていたことは誰も知らないことなので最後の方まで残り自分が呼ばれる。
チーム分けができたところで早速ゲームが始まる。自分を含めて10人がコートに入る。ゲームが始まると、サッカー部の独占場。普段通学路の石ころを蹴るぐらいしかやらない人間にとって、ドリブルは難しい技術なのかも知れない。ゴール前で大人しくしていた自分の前にサッカー部のやつが蹴り込んでくる。どうせ撮れないと思っているのかフェイントも入れずにまっすぐに自分に迫ってくる。さっきのこともあり、あまり目立つのは避けたいがここまで舐められるのは流石の僕でもイラッとする。舐めた相手なら簡単にボールを取れる。流れるようにボールをとった僕はそのまま相手ゴールまで迫る。取られたサッカー部のやつは何が起きたのかわかっていないようだった。周りも、いきなり動き出した僕にびっくりしていた。簡単にゴール前まで行った僕は、そのまま決めてもよかったのだが目の前にいる仲間にパスを出して、そいつにゴールを決めさせた。ゴールを決めた仲間とハイタッチをして、仲間が詰め寄ってくる。
「お前、サッカーできたのかよ。」
「小学校までやってたんだ。最近ボール蹴ってなかったから動けて安心したよ。」
こっちのチームは大いに盛り上がっている。隣でバレーをしている女子の方もなぜか盛り上がっている。これが黄色い声援なのかと思った。思ったよりも頭に響いて心地いいものではないなとも思った。その声を上げている女子の中で静かに拍手をしている夏帆が可愛かった。
「何、彼女の方ばかり見てんだよ。」
クラスの男子に話しかけられた。
「気になるなら行ってやれよ。」
なぜか、背中を押されて夏帆のほうに向かう。すると、女子の方から、
「彼氏さんがきたよ。」
と言われて恥ずかしがりながら自分に近寄ってきた。
「ぶかぶかだね。」
「そうだね。でも、これでよかった。」
ぶかぶかの体操着の袖を顔に当てて、匂いを嗅いでいる。
「落ち着く?」
好きな人の匂いが落ち着く気持ちがわかるので聞いてみた。
「うん。落ち着く。」
「そっか。よかった。」
夏帆の頭に手を置きながら自分はささやく。夏帆は長すぎる袖で自分の顔を隠した。
「そこの2人。もうそろそろ始めるけど良いか?」
体育の先生がクラス中の注目を集めている自分たちに話しかけてきた。気づけばすでに授業の時間は始まっていて、クラスメイトはこっちを向きながらも整列していた。まだこんな人数に注目されることに慣れていない僕たちは赤面しながら自分の入りについた。
体育の内容は体育館を二つに分けて、男子はフットサル、女子はバレーボールだった。部活には入っていなかったが小学3年生からずっと強豪サッカークラブでサッカーをしていたから、そこそこ自信はある。クラスメイトにはもちろんサッカー部がいるが、そこまで強い学校ではないので実力はどっこいどっこいだと思う。
中学校の体育は基本的にその競技の部活に入っている人間が主導権を握る。どんな目立たない奴もその部活に入っているだけで周りから引っ張りだこになる。もしくは、部活の人間だけ集めてドラフトのようなことをする。例によってちょうど半々になるようにサッカー部のやつが別れて、ドラフトが始まった。運動部のやつから選ばれていく。帰宅部の僕がサッカーをしていたことは誰も知らないことなので最後の方まで残り自分が呼ばれる。
チーム分けができたところで早速ゲームが始まる。自分を含めて10人がコートに入る。ゲームが始まると、サッカー部の独占場。普段通学路の石ころを蹴るぐらいしかやらない人間にとって、ドリブルは難しい技術なのかも知れない。ゴール前で大人しくしていた自分の前にサッカー部のやつが蹴り込んでくる。どうせ撮れないと思っているのかフェイントも入れずにまっすぐに自分に迫ってくる。さっきのこともあり、あまり目立つのは避けたいがここまで舐められるのは流石の僕でもイラッとする。舐めた相手なら簡単にボールを取れる。流れるようにボールをとった僕はそのまま相手ゴールまで迫る。取られたサッカー部のやつは何が起きたのかわかっていないようだった。周りも、いきなり動き出した僕にびっくりしていた。簡単にゴール前まで行った僕は、そのまま決めてもよかったのだが目の前にいる仲間にパスを出して、そいつにゴールを決めさせた。ゴールを決めた仲間とハイタッチをして、仲間が詰め寄ってくる。
「お前、サッカーできたのかよ。」
「小学校までやってたんだ。最近ボール蹴ってなかったから動けて安心したよ。」
こっちのチームは大いに盛り上がっている。隣でバレーをしている女子の方もなぜか盛り上がっている。これが黄色い声援なのかと思った。思ったよりも頭に響いて心地いいものではないなとも思った。その声を上げている女子の中で静かに拍手をしている夏帆が可愛かった。