話を聞く限り、いじめを受けていたのは僕ら以外に相当数いたらしい。内容も様々でお金持ちの子からはお金を巻きあげたりもしていたらしい。僕はクラス中から英雄扱いされて、いつも窓際にいた自分がいつの間にかクラスの中心になっていた。

 しばらくすると先生がクラスに入ってきた。先生は教壇に立ってすぐに、

「すまなかった。」

僕たちに向けて頭を下げた。

「いじめに気付けなかった。これは俺の責任だ。今まで苦しい思いをしてきたみんなに謝っても謝りきれない。今回、幸助くんからの報告で初めていじめが発覚した。ありがとう。知らせてくれて。」

先生は再び自分たちに頭を下げた。

そこからは、普段通りの日常。今までいろんなことが頭の中にあって授業に集中できたことがなかった。落書きのされていない教科書にノート。ボロボロになっていないシャーペンの芯。真っ黒になってない消しゴム。どれも、中学校に入って初めての経験だった。勉強も今までしようと思っていなかったから何もかもが新鮮で別の世界に来たみたいで楽しかった。隣に座っている子が教科書を忘れたので机をくっつけて一緒に見る。学校で笑うことなんてないと思っていた。

 昼休みになり、お弁当の時間。今まで1人で隠れて食べていたけど、今日はいろんな人からお誘いがあった。でも、今日は一緒に食べる人を決めていた。

「夏帆ちゃん。一緒に食べよう。」

「私でいいの?」

「夏帆ちゃんがいいの。」

クラス中からからかわれたが、気にしない。静かに2人っきりで食べたかった。

 夏帆ちゃんを連れて、屋上に行く。

「本当にいいの?いろんな人に誘われてたんでしょ?」

「気にしない気にしない。お昼ご飯は好きな人と食べたいじゃん?」

自分の言葉に夏帆ちゃんは顔を赤らめる。

「早く食べよ。お腹すいた。」

学校で誰かと一緒にお弁当を食べられるだけで嬉しかったが隣には夏帆ちゃんがいることが何より嬉しかった。今までの自分では考えられないくらい幸せな時間だった。