日向さんとの会話から数日たった今でも自分自身でも気持ちの整理ができないままでいた。それは他の仕事にも影響が出ていた。月一の会社への出勤を忘れたり、どこか集中力がないため少し大きなミスもした。自分がしたミスもルイのおかげで大惨事はならなかったが、少し真心に注意された。自分なりにそこそこの困難は乗り越えてきた自信があったが、ここまで精神的に弱るとは思いもしなかった。佐藤さんの言った通り自分はまだ青臭いガキなのかもと改めて感じた。家族も自分がおかしいことに気づいたのか家で母さんに呼び止められた。
「寛、あんたなんかあったの?最近様子がおかしいからさ。」
「まあ少しね。自分で撒いた種なのにどうしていいか分からなくなって。見えていた道が真実を知った途端見えなくなった。真実を知ることの覚悟はしているつもりだったんだけどね。」
「そうか。私には遠回しすぎて分からないけど。あんたの悪いところは自分の問題解決能力に甘えて1人で抱え込んで人に相談しないこと。話したくないことなのはわかるけど1人じゃ限界だってあるでしょ。今日はちょうどお父さんが珍しく早く帰ってきてるから相談してみたら。こう言ったことは男同士の方が話しやすいでしょ。」
自分は母さんの提案に乗ることにした。この家に来てから父さんと一対一で話すことは数えるくらいしかない。悩み相談なんてしたこともない。少し緊張してきた。
母さんのアドバイス通りに父さんに相談するために父さんの部屋の前まできた。喉を鳴らし、ノックする。
「父さん。寛です。入っていいですか?」
しばらくして、入室の許可が出たので父さんの部屋に入る。父さんの部屋は基本的に真っ白。整理整頓されていて、ゴミひとつない。必要最低限のものしかなく、無駄なものは一切ない。本の表紙もわざわざ白いカバーをかけるほどの徹底ぶり。ごちゃごちゃしていると色々と集中できないらしい。影以外の色のない部屋は色の識別できない父さんにとって最高に集中できる環境らしい。この部屋は唯一、父さんと同じ感覚になれる場所で、父さんが見ている世界が見れる場所だと思う。
「珍しいな。寛が話なんて。この部屋に入るの嫌がってたじゃないか。」
確かにこの部屋に入ると自分は気がおかしくなりそうになる。真っ白の世界で自分が一人ぼっちになってしまったような感じがして、強い孤独感が押し寄せてくるからだ。自分の中で最も苦痛な孤独を強いられる環境だからこそあまりこの部屋には入りたくない。家の中の全般の家事を行っている自分が唯一掃除をしないのがこの部屋だ。
「寛がこの部屋にくるくらいだから相当追い込まれることがあったんだろうけどそれは俺に話していいことなのか?」
「大丈夫だとは思います。許可は得ていませんが父さんのことは日向さんも信用しているみたいなので。」
「寛がそこまで言うのなら問題ないと思うがそこらへんは慎重にな。ルイに負担をかけるわけにもいかないからな。」
「十分理解しているつもりです。これ会社関係ではなく自分一個人の仕事です。自分自身もあまり踏み込んだこともしてませんし。相談内容にも個人を特定できるような内容は含まないつもりです。」
会社内同様家の中でも自分と父さんには少し距離がある。と言うよりも自分が勝手に距離をとってしまう。自分のことを受け入れてもらっているのは重々わかってはいるのだが少し自分の中では父さんに関して負い目がある。娘を2人とももらっているわけだし、ルイのことだってそう。自分のことをあまりよく思っていなくてもおかしくはない。父さんがあまり家にいないことをいいことに向き合って話すことも多くはなかった。
「大事なことだからな。」
「はい。わかっています。」
父さんからの確認を終えて、本題に入った。自分の状況含めほぼ全て。もちろんさくらの名前や病名なんかは伏せた。
「信頼されているんだな。」
「ありがたいことにそうみたいです。」
「あの一件以来、正直寛には会社に専念させるべきか悩んでいたんだ。2人の娘のため。もちろん寛のことも考えて。別に会社のみに専念してもらってもお金には困らない。会社的にも寛が常にいることで問題にも迅速に対応できる。真心とルイだけじゃどうしようもないことがあるからね。でもね、正直会社に寛を拘束するのも勿体無いなと思う自分もいる。もっと寛のことを必要としている場所があると思うんだ。それで今寛のことを必要としてくれている場所にいるのなら俺は寛をその人たちから奪うことはできない。必要とされている人たちに信頼されているならその期待に応えなさい。」
少しありふれた言葉のように聞こえたが普段あまり話さない父さんからの言葉は身に染みた。
「でだ、相談事なんだけどね。俺から送るアドバイスはないかな。寛の方がこう言ったことは得意だろ。俺のとこにくる時点でもうすでに答えはでているんじゃないかな?」
「大丈夫です。少し話してスッキリしました。期待に応えられるように頑張ります。」
最後に背中を叩いてもらい、部屋を後にした。
「寛、あんたなんかあったの?最近様子がおかしいからさ。」
「まあ少しね。自分で撒いた種なのにどうしていいか分からなくなって。見えていた道が真実を知った途端見えなくなった。真実を知ることの覚悟はしているつもりだったんだけどね。」
「そうか。私には遠回しすぎて分からないけど。あんたの悪いところは自分の問題解決能力に甘えて1人で抱え込んで人に相談しないこと。話したくないことなのはわかるけど1人じゃ限界だってあるでしょ。今日はちょうどお父さんが珍しく早く帰ってきてるから相談してみたら。こう言ったことは男同士の方が話しやすいでしょ。」
自分は母さんの提案に乗ることにした。この家に来てから父さんと一対一で話すことは数えるくらいしかない。悩み相談なんてしたこともない。少し緊張してきた。
母さんのアドバイス通りに父さんに相談するために父さんの部屋の前まできた。喉を鳴らし、ノックする。
「父さん。寛です。入っていいですか?」
しばらくして、入室の許可が出たので父さんの部屋に入る。父さんの部屋は基本的に真っ白。整理整頓されていて、ゴミひとつない。必要最低限のものしかなく、無駄なものは一切ない。本の表紙もわざわざ白いカバーをかけるほどの徹底ぶり。ごちゃごちゃしていると色々と集中できないらしい。影以外の色のない部屋は色の識別できない父さんにとって最高に集中できる環境らしい。この部屋は唯一、父さんと同じ感覚になれる場所で、父さんが見ている世界が見れる場所だと思う。
「珍しいな。寛が話なんて。この部屋に入るの嫌がってたじゃないか。」
確かにこの部屋に入ると自分は気がおかしくなりそうになる。真っ白の世界で自分が一人ぼっちになってしまったような感じがして、強い孤独感が押し寄せてくるからだ。自分の中で最も苦痛な孤独を強いられる環境だからこそあまりこの部屋には入りたくない。家の中の全般の家事を行っている自分が唯一掃除をしないのがこの部屋だ。
「寛がこの部屋にくるくらいだから相当追い込まれることがあったんだろうけどそれは俺に話していいことなのか?」
「大丈夫だとは思います。許可は得ていませんが父さんのことは日向さんも信用しているみたいなので。」
「寛がそこまで言うのなら問題ないと思うがそこらへんは慎重にな。ルイに負担をかけるわけにもいかないからな。」
「十分理解しているつもりです。これ会社関係ではなく自分一個人の仕事です。自分自身もあまり踏み込んだこともしてませんし。相談内容にも個人を特定できるような内容は含まないつもりです。」
会社内同様家の中でも自分と父さんには少し距離がある。と言うよりも自分が勝手に距離をとってしまう。自分のことを受け入れてもらっているのは重々わかってはいるのだが少し自分の中では父さんに関して負い目がある。娘を2人とももらっているわけだし、ルイのことだってそう。自分のことをあまりよく思っていなくてもおかしくはない。父さんがあまり家にいないことをいいことに向き合って話すことも多くはなかった。
「大事なことだからな。」
「はい。わかっています。」
父さんからの確認を終えて、本題に入った。自分の状況含めほぼ全て。もちろんさくらの名前や病名なんかは伏せた。
「信頼されているんだな。」
「ありがたいことにそうみたいです。」
「あの一件以来、正直寛には会社に専念させるべきか悩んでいたんだ。2人の娘のため。もちろん寛のことも考えて。別に会社のみに専念してもらってもお金には困らない。会社的にも寛が常にいることで問題にも迅速に対応できる。真心とルイだけじゃどうしようもないことがあるからね。でもね、正直会社に寛を拘束するのも勿体無いなと思う自分もいる。もっと寛のことを必要としている場所があると思うんだ。それで今寛のことを必要としてくれている場所にいるのなら俺は寛をその人たちから奪うことはできない。必要とされている人たちに信頼されているならその期待に応えなさい。」
少しありふれた言葉のように聞こえたが普段あまり話さない父さんからの言葉は身に染みた。
「でだ、相談事なんだけどね。俺から送るアドバイスはないかな。寛の方がこう言ったことは得意だろ。俺のとこにくる時点でもうすでに答えはでているんじゃないかな?」
「大丈夫です。少し話してスッキリしました。期待に応えられるように頑張ります。」
最後に背中を叩いてもらい、部屋を後にした。