「なあ、美香」

「なに?」

これまた唐突に話しかけてくる三上君。

「俺もさあ、勉強会に行っていいか?」

驚いて、思わず三上君の顔を凝視する。

「な、なんだよ」

そんなあからさまに目をそらさなくても……

「三上君が勉強するの!?」

あっ、しまった。失言だ。

途端にムッとした顔になる。

「一応、俺だって美香と同じ時期に受験を控える身なんだけど」

そうでした、そうでした。

日替わりで女の子を連れて帰っていくから、てっきり勉強するなんて概念がなかったのかと……

「いいよ。もちろん。でも、三上君は放課後の予定が詰まってるのかなあって……」

「気になるのか?」

「全然」

チッ

「即答かよ」

だから、舌打ちはやめて欲しい。

「まあいいや。決めた!俺も図書館で勉強するわ。俺さあ、美香に教えてもらわねえとなんともなんねぇから、曜日を合わせようぜ」

「もちろん、いいよ。あっ、でも女の子を来させるのはやめてよ」

途端に三上君の表情が明るくなる。

私、なんか言ったっけ?

「気になるのか?」

「なにが?」

「……女が来ること」

「いや、全然」

チッ 

「即答かよ」

もう慣れてきた、その舌打ちも。

「あっ!ある意味気になるわ。集中が途切れるからやめて欲しい」

「それたけかよ」

ん?
それ以上でもそれ以下でもないけど。

「わかった。来させねぇよ」

そんな権限や力が、三上君にあるのかねぇ……と、疑わしく思ったことは黙っておこう。