「おい、名前なんだっけ?」

三上君が女の子に随分冷たい声を向けた。

「うん?咲だよ。ちゃんと覚えてよね」

上目遣い!!
人前でよく恥ずかしげもなくできるなあと、素直に感心してしまう。

「咲、ちょっと出るぞ」

「うん」

咲ちゃんは嬉しそうに返事をしてるけど、三上君は荷物を置いたままなわけで……

このまま帰るつもりはなさそうだ。



「南君なんか、ごめんね。って、私が謝るのも変だけどさ。集中、途切れちゃったよね」

「まあ……確かにね」

「そろそろ帰る?」

「うーん……もうちょっとだけいい?ここがわからなくって」

そう言って示すのは、数学の問題だった。

「数学かあ。苦手なんだよね。わかるといいんだけど」

問題を受け取って目を通していく。

あっ、これならなんとかなりそう。

「えっとね……」