しばらくすると、また誰かが入室して来たようだ。

チラリと目を向けて、思わず小さくため息を吐いた。


「あっ、いたいた。し・ん・やくーん!!」

ですよねぇ。
お化粧バッチリですもんね。

思わず非難の目を、隣の三上君に向ける。

珍しくバツの悪そうな顔したのは演技か?ポーズか?


「他の子から聞いたの。ここに来れば真也君がいる可能性が高いって」

迷惑な情報を流してくれたものだ。

おかげで、連日勉強の邪魔になってるんだけど。


いや。
迷惑なのは情報を流したことじゃなくて、何をするでもなく、ふらふらっとここへ来る三上君か。

「なんか用か?」

「やだぁ、もう。冷たくしないでよ」

すかさず横の席に座って、三上君に絡みつく彼女。

だから、そういうのは他所でやってよ。

南君も、見ていいものなのか戸惑ってるじゃない。


「三上君」

努めて冷静に、穏やかに呼びかけた。

「私達さあ、ここに勉強しにきてるの。おしゃべりやイチャつきたいだけなら、他所でやってくれる?」

一瞬、三上君の顔が強張るのがわかった。

流石に言いすぎちゃったかな。

今日は確かにノートを広げてたんだしね。


おまけに、この子は約束もないまま来たみたいだし……

「だって、真也君。どこか行こうよ」

そうそう、どこかに行ってくれ。


一瞬、三上君の瞳が揺れた。

右腕には、相変わらず女の子がしがみついたままだ。