「よお、美香。はよ」


三上君とは家が隣同士だけど、一緒に登下校することは今となってはもうない。

中学校までは、予定が合えば一緒だったんだけどね。

高校に入った途端、朝はギリギリの登校だし、帰りは女の子とどっかに行ってるし、見事にバラバラだ。


でもたまに、出会すことも。

こんなふうにね。


珍しく余裕のある時間に登校してきた三上君と、今朝は下駄箱で一緒になった。


「おはよう、三上君」

とたんに不機嫌な顔になってしまう。

私、今挨拶しただけだよね?

「なんだよ、その三上君ってやつは」

「えっ?」

「前は名前で呼んでたじゃん」

ああ、そういうことね。

確かに以前は〝真也君〟って呼んでたよね。


けどさあ……


「もう高校生だし、名前で呼ぶのもどうかって思って」

「なんだよ、それ」

彼の小さなボヤキは、私の胸に小さく爪を立てる。

けど、やっぱり今の彼のことを〝真也君〟とは呼べない。


ううん、呼びたくない。


あの最低な発言を聞いちゃったら、親友と思っていた自分がなんだか惨めに思えた。


彼はこんなこと言う人じゃなかった。

優しい人だったのに……