よし。さすがヤクザなだけはあって、捕まえるのは得意のようだ。
 だがそんなことを思っている場合ではない。
私は、捕まっている戸田君のところまで行く。
 そして仁王立ちになって彼を見下ろした。

「まったく。逃げるなんてどうかしているわ。
さぁ、観念して話し合おうじゃないの?戸田君」

 ヤクザに捕まえさせ仁王立ちで見下ろしている姿は、まるで自分も極道になった気分だった。
 戸田君は、観念したのか大人しくお店に戻ってくれた。

 鬼龍院さんに事情を話して事務室で話し合うことに……。
 そこで何故鬼龍院さんがそこに来たのか理由が明らかになった。
 まさかの経営者だったなんて驚きだ。

「えっ?ここ……鬼龍院さんの経営しているお店なんですか!?」

「あぁ……正確には、鬼龍院組の土地と建物なんだ。
 他にもいくつかあるけどシマでもあるから、たまに経営状態などを視察することもあってね。
 今日もそれで来ていたんだ!」

 なるほど……それでか。
私は、納得した。しかし凄いわね。
  鬼龍院さんの土地やシマっていくつあるのかしら?
ショッピングモールに学園と、このホストのお店。
 数えただけでもかなりの地主だし……。

 あ、そうなると……ここの権利や権力は、全て鬼龍院さんにあるのよね?
 だとしたら彼に止めてもらえば……。
するとそれを察知したのか鬼龍院さんは、スッと表情を変えた。若頭モードだ!

「それより話は上紗さん……いや、君の先生から全て聞かせてもらった。
 残念だが……今日で君は、お店を辞めてもらう」

「な、何でですか!?俺は、真面目に働いてます。
 これからだって働きますからここで働かせて下さい。
じゃないと借金が返せなくなる……まだ弟も小さいし」

 さすが鬼龍院さん。私の気持ちを尊重してくれた。
しかし戸田君は、必死に頭を下げてきた。
 彼の気持ちを考えると胸が痛くなる。
もちろんホストをやるのは反対だ。でも……。

「ダメだ。辞めてもらう……。
 まず未成年がホストみたいなお店で働くことは、法律で禁止されている。
 もし警察に見つかったりしたら営業停止になるし、ただでは済まなくなる。
 君だって学校にバレたら困るだろ?」

「……それは……」