「どーせ知っているんだろ?俺ん家に借金があること。
 その借金……利子とか膨れ上がり過ぎて、どう考えても親が働いても返せる金額じゃねぇ!!
 俺がホストして返さないと払い終わる訳がないんだ」

 拳をギュッと握りしめながら話してきた。
その表情は、苦しそうだった。
 家族のために……無理していることが分かる。
胸が潰れそうになるぐらい苦しくなった。
 どうにか出来ないだろうか……彼を助けるために。
どうにか……。しかしその時だった。
 何だか店内がざわつきだした。

 どうしたの?誰か来たのかしら?
私は、騒ぐ方を見てみた。すると……えっ?
 店内に入って来たのは、鬼龍院さんだった。
しかも何人の部下を連れてだ。
 な、何で鬼龍院さんがここに……!?

 まさか鬼龍院さんが、こんなホストのお店に来るなんて思わなかったから驚いてしまった。
 店内中は、大騒ぎだ。女性客はキャーキャーと騒ぐし、ホスト達も慌てて集まりだした。
 すると1人のオーナーらしき中年男性が鬼龍院さんのもとに……。

「ようこそ。いらっしゃいました若。
今日は、視察で?」

「あぁ……何も問題はないか?」

「も、もちろんです。いつもの通りに営業しております。売り上げも順調で……」

 オーナーらしき人が説明している最中に鬼龍院さんは、私と目が合ってしまった。
 あ、しまった。まずい……。
私は、慌てて背中を向けた。だがすでに遅い。
 鬼龍院さんは、慌ててこちらに来て私の腕を掴んできた。

「か、上紗さん!?何故、君がここに?」

 それは、私も一緒です!!
何故鬼龍院さんがここに来るのか分からないし
 こんなところに居る私をどうやって説明したらいいか分からない。
 するとまずいと思ったのか戸田君は、慌てて店内から逃げ出してしまった。

「あ、戸田君!!ちょっと……あなた達。
 あの子を捕まえて!?私の生徒なの……」

 慌てて叫ぶと鬼龍院さんの部下達は、ざわつき何人か追いかけてくれた。私も追いかけなくちゃあ!!
 鬼龍院さんの掴んだ腕を振り払い私も走って追いかける。

 外に出ると左の方に逃げて行く戸田君が見えた。
まったく逃げるとか何を考えているのよ!?
 私は、そのまま追いかけるが、さすがにパンプスでは、追いかけにくい。
 すると前に走っていた部下達が何とか追い付き捕まえてくれた。