「シッ。声が大きいから……。
 もう聞かされた時は、びっくりしたわよ。側近の人は、ヤクザだし怖いし」

それは、事実だ。側近の人は、確かに怖かった。
それに、そんな人が私のお見合い相手だなんて……。
 まるでドラマか漫画でも見ているようだった。

「へぇ……居るものなのね?
 お見合いがヤクザの親分とか……で?どうするの?
断るの?でも勿体ない気もするわね……」

「何が勿体ないよ?相手は、ヤクザなのよ?」

 それこそ普通なら断るべきじゃない?
危ないからやめろとかさ。ろくな男じゃないからとか……言わないの?

「だってヤクザ以外は、最高なんでしょ?
 お金持ちだろうし、顔良し、頭良しなんてなかなか居ないわよ~そんなハイスペックな男は」

うっ……それを言われるとキツい。
確かにヤクザではなかったらハイスペックだっただろう。
顔も好みで言うことはない……。

「断るにしても、せめて1回ぐらいデートしてきなさいよ?
 気分だけ味わって断ればいいじゃない?
きっと素敵なお店とかたくさん知っているはずよ」

「簡単に言うわね……」

「あら。人生楽しんだもん勝ちよ!」

フフッと笑う奈緒だった。
 彼女は、お色気ムンムンで楽しいことや派手なことが大好きだ。泣かした男は……数知れず。
 そんな彼女なのだが、何故か馬が合う。

 人生楽しんだもん勝ちねぇ……。
1回ぐらいのデートか。気になるのも事実だ。
 それでいいのか分からないけど……彼のことでスッキリさせるには、その方がいいのかもしれない。

 ハァッ……とまた深いため息を吐きながら窓から見える空をぼんやりと眺めていた。