戸田君は、勢いよくそれだけ言うと逃げるように行ってしまった。
 それは、もう……あっという間に。……はい?
私は、まだ家庭とバイトのことしか言ってないわよ?

 具体的なことまで言っていないのに勢いよく否定されて逃げられたため私は、驚いてしまった。
ますます怪しいわね……そこまで否定するなんて。

 やはりホストのバイトをしているっていう話は、本当みたいね。
 そこまで必死に隠すとなると他にもあるのかしら?
まさか……脅されたりして?

何だか余計に心配になってきた。
 余計なことに首を突っ込むなと言われたばかりだけど、可愛い教え子を放ってはおけない。
 これは、私しか出来ないことだ。
私は、そう決意をすると放課後まで辛抱強く待った。

 そして学校が終わると急いで戸田君がバイトしている商店街に向かった。
 日が沈むとネオンの光りでキラキラした夜の世界になっていた。この辺は、行ったことがない。
 居酒屋が多い商店街から奥にあり、周りは、ホスト、キャバクラ、クラブ、ホテルなどなど。
 呼び込みをしている人達も華やかな感じで、いかにもお水関係の人達だった。

「あ、そこの美人のお姉さん。ウチのお店に寄ってかない?」

 なんてお誘いもあったが私は、無視して戸田君を捜していた。一体何処に居るのかしら?
 絶対に反対するから坂下君には、居場所を聞けなかったし……どうやって捜したらいいか分からない。

 するとコンビニの袋を持った戸田君が急いで走っているのが見えた。あ、戸田君!!
 私は、慌てて戸田君を追いかけた。
するとこの中でも目立つ大きな建物に入って行った。
 ここがバイト先のホストのお店かしら?
まるでホストのお店ってより会員制の高級ホテルみたいだ。

 どうしよう……中に入るか戸惑うが、早く連れ戻さないと……。
仕方がないと私は、決意して中に入っていく。
 中に入ると高級感があって華やかな店内にイケメンホストがたくさん居た。
 まるで別世界に来たようだった。
こういう世界には、来たことがないため私は驚いてしまった。

「お客様。初めてでいらっしゃいますか?」

「は、はい」

 うわぁ~声をかけてきた人もイケメンだわ。
高級のスーツに高級の腕時計。
明るい金髪に整った顔立ちをしている。さすが……ホスト。

「こちらは、会員制になっております。
初めての方は、手続きをお願い致します」

 か、会員制!?どうしよう……私会員じゃない。
手続きをするにも戸田君を連れ戻すだけだし、そのために高いお金を払うのも……。
 でも、そうしないと連れ戻せないし……。