「先生に馬鹿とか言わない。
それよりもどうして今日は、保健室の中に居るのよ?」

「別に……早く来て寝ようと思って。
 それよりも自分から危ないことに首を突っ込むなよ?
大体……いつも……」

 坂下君が何かを言おうとしたその時だった。
ガラッと誰かが入ってきた。
 見ると私の担当する1組の生徒・戸田君だった。

 だが、私達を見るなり慌てて保健室から出て行ってしまった。唖然とする私達。
 えっ?戸田君!?何故逃げるの……担任なのに。
動揺していると坂下君がため息を吐いてきた。

「そういえばアイツん家。今大変みたいだな」

「えっ?どういうこと?」

「アイツん家。近所だから知ってるけど、父親が知人の借金の連帯保証人になったらしいぜ?
 で、その知人が逃げて多額の借金が残ったとか。
この前……バイト帰りに見たけど。
 アイツ……ホストのバイトしているみたいだし」

は、はい!?
 驚き過ぎて何処からツッコんだらいいか分からなかった。
 まさか戸田君の家が大変なことになっているなんて
しかもホストのバイトですって!?

 未成年がホストみたいな夜の仕事で働くことは、法律で禁止されている。
 まさか年齢を誤魔化して?だとしても辞めさせないといけない。
 もし警察や学校に見つかったら停学では済まなくなるわよ!?

「言っておくけど、あまり首突っ込むなよ?
すぐに危ないことに首を突っ込むくせに」

「う、うるさいわね。
別に首突っ込んでいるつもりはないし……」

 別に好き好んで危ないことに首を突っ込んでいるつもりは、最初からなかった。
 ただ担任教師として気になるし話を聞きたい。
もしかしたら相談に乗れるかもしれない。
 そう思った私は、戸田君に話を聞こうとあの後に声をかけた。

「ご両親のことなら聞いたわ。
大変だったわね。でもバイトのことは……」

「ぼ、僕……何もしてませんから!!」