私は、カバンからハンカチを取り出すと鬼龍院さんの涙を拭いてあげた。
するとハンカチを持っている右手に手を重ねてきた。
涙目ながらも愛おしそうに私を見る鬼龍院さんに私の鼓動は、さらに激しくなってくる。
どちらからなのか分からない。
気づいたらお互いに唇を重ねてキスをしていた。
唇を離すとお互いにハッとしたのか慌てて離れる。
自分でも驚く出来事だった。き、キス……しちゃった!!
見ると鬼龍院さんは、耳まで真っ赤にさせて唇に触れていた。彼もまた動揺していた。
「あの……すみません」
何故私が謝るのかは分からない。
ただ何か口に出さないと恥ずかしかった。
すると鬼龍院さんは、頬を染めたまま私を見るとニコッと天使の微笑みを見せてくれた。
その微笑みを見せられたら何も言えなくなってしまった。
ドキドキする心臓は、破裂するぐらいに激しい。
その後。あまりにも恥ずかしかったので早めに自宅に帰った。
急いで自分の部屋に行くとベッドにダイブする。
さっきのことを思い出しては、ゴロゴロと転がりながら枕を抱き締めた。
あぁ、キスをしちゃった……。
まだ微かに感触は残っている。
それにドキドキするぐらいに嬉しかった。
これが嫌な男だったらビンタものだ。
だが鬼龍院さんには、そんなことをする必要はない。
好きなら当たり前か……。
しかしあることに気づいた。
そういえば自分は、まだ正式に付き合うとか口に出していなかった。
いや。まったくではない。
恋人らしいこととか……それらしいことは、口に出していた。
だが勢い任せでお見合いのことは、うやむやなままだった。
この場合は、どうしたらいいのだろうか?
告白……。いやいや、そんな恥ずかしい……。
あぁ、なんであの時に一緒に告白しておかなかったのか。
勢いのあるくせに、こういう時だけ度胸がない。
私は、ベッドの上でさらに悶えていた。
この気持ちを誰かに聞いてほしくて次の日。
この内容を奈緒に報告した。
奈緒は、コーヒーを淹れながらゲラゲラと笑っていた。
「アハハッ……あんた、それ。
もう告白したようなもんじゃない!?何を今さら……」
「えっ~あんなの告白に入らないわよ。
私は、好きとかその……ちゃんと言いたいし」
「告白されたいとかではなくて、したいなのね。
まぁ……上紗らしいけどね。
いいんじゃない。今度のデートでも告白したら」
クスクスと笑いながら私にコーヒーの入ったコップを渡してきた。
もう……簡単に言わないでよ!