「うるせーな。だからババアは、ヒステリーで嫌なんだよ……」
「何ですって!?」
保健室のベッドで転がりながら漫画を読んでいる坂下君にキレそうになる。
相変わらずあぁ言えばこう言う……。
お礼を言うはずが、ただの説教になってしまった。
これだと普段と同じじゃない。まったく……。
するとデスクで座り仕事をしていた奈緒は、クスクスと笑ってきた。
「まぁまぁ。坂下君は、上紗に普段通りに接してほしくて、あえてサボっているのよね?
普段から構ってほしくてやっているようなものだし」
「ち、ちげぇーよ!!入谷先生、勝手なこと言うなよ!?」
坂下君は、耳まで真っ赤にさせてベッドから起き上がる。
その態度を見て奈緒は、さらにクスクスと笑った。
えっ……どういう意味?
構ってほしくてやっているって……私に対して?
「フフッ……あーら、ごめんなさい。
あ、それよりも上紗。あんたの男……昨日随分と暴れたんだって?
チラッと見たけど予想以上のイケメンじゃない」
「あ、それなんだけど……」
私は、理事長から話されたことを説明した。
お陰でクビにならなかったことも含めてだ。
奈緒は、それを興味津々と聞いていた。
「あら~イケメンでヤクザの親分だけではなくて人格者なのね。素敵じゃない」
「はぁっ?それって人格者か?
ただ周りが甘いだけじゃねぇーかよ」
うっとりと言ってくる奈緒と違い坂下君は、身も蓋もないことを言ってきた。周りが甘いって……。
いや。確かに重松さんといい、理事長も鬼龍院さんに対して温かく見守っている感じだ。
それって周りから見たら甘いのかしら?
うーん、どう違うのだろうか……。
「あーら。甘いのも人格者としては長所よ?
それだけ信頼と好意的ってことじゃない。
鬼龍院さんは、ヤクザの親分としてだけではなく、人としての人格者でもあるってことじゃない。
なかなか居ないわよ?そういう器を持った男は……」
「はぁっ……?俺には、ただの胡散臭い奴だけどな」
フフッと笑う奈緒に対して不満だらけの坂下君。
私は、それを聞いて奈緒の意見に同意した。