教頭のようなピリピリ感はない。むしろ好意的な雰囲気だった。
 あれ?おかしいわね……クビを言い渡されるのかと思ったが違うのかしら?
 いや。それよりも鬼龍院さんのことを聞かないと……。

「あ、あの……お話したいことなんですが……」

「昨日……乱闘騒ぎがあったそうですね?
 しかも他校の不良達を倒したのは、ヤクザの若頭とか?」

 ギクッ!!明らかに知っている様子だった。
ど、どうしよう。なんて言い訳をしたらいいのかしら。
 いざ言おうとしたら緊張と恐怖で頭の中が真っ白になってきた。
 すると理事長は、クスッと笑った。

「鬼龍院組の若君とは……随分と凄い方とお付き合いをなさっているんですね?」

えっ……?
 私は、驚いて見ると理事長は、スッと立ち上がり窓際まで歩き出した。そして立ち止まった。
 私は、不思議そうに見るとこちらをチラッと見てきた。

「鬼龍院組とは、古くからの付き合いなんですよ。
もともとこの学園のすべての土地は、鬼龍院組の土地なんです」

 えぇっ……!?まさかの発言に驚いてしまった。
この海王高等学園は、鬼龍院組の土地!?
ということは……鬼龍院さんのモノ?
 私は、驚きのあまり言葉を失う。
理事長は、クスッと笑うと話を続けてきた。

「驚きましたよ……不審者だと連れて来られたのは、鬼龍院組の若君なんですから。
 事情は、彼から全て聞きました。
責任は、全て自分にあるから椎名先生の処分は、見逃してほしいと」

 鬼龍院さんが……!?

「今回の件は、父兄からも苦情が出ています。
 ヤクザと交際する教師なんて危ないと……しかし。
鬼龍院組の若君の頼みなら聞かないといけません。
 学園の存続するためにも……」

 それは……。私は、さらに言葉を無くした。
学園は、鬼龍院組には逆らえない。
 つまりクビにならないのは、鬼龍院組の圧力であり、それに従ったため……。

 罪悪感と申し訳なさで胸が締め付けられそうになった。
これでは、交際を反対されるよりも辛い……。

 私が鬼龍院さんを誘ったばかりに皆に迷惑をかけてしまうなんて……。
 泣きたい気持ちをギュッと我慢をしていると理事長から意外な言葉が出てきた。