「鬼龍院さん!?」

 素に戻っていた鬼龍院さんは、言われるがまま警備員さんに連れて行かれてしまった。
 大変なことになってしまった……。

 その後。クラスは、片付けや怪我したの人の手当てなどでバタバタしていた。
 教頭先生には、ヤクザと交際していると知ると二度とそのような者とは付き合うなとこっぴどく叱られた。

 きっと父兄からも苦情が出るだろうし、下手したらクビになるかもしれない。
 だがそんなのは、この際どうでも良かった。
問題は、鬼龍院さんだ!
 あれから連絡しても繋がらない。

 もしかして警察に呼ばれたのかしら?
それとも……何かあったのだろうか。
 私は、不安で仕方がなかった。
とにかく明日……上に掛け合ってみよう。
 もしかしたら呼び出しがあるかもしれないし。
ギュッとスマホを握り締めながら祈る気持ちだった。

 翌日。一睡も出来なかったが私は、慌てて学校に向かった。
 処分は、後で言い渡すと言っていたけど……。
学校に行くと生徒達は、チラチラとこちらを見ていた。
 そしてコソコソと何やら言っていた。
きっと昨日の騒ぎで変な目で見ているのだろう。

 教師としては致命的だ。
だが、そんなことよりも鬼龍院さんのことよ!
 私は、そのまま理事長室まで向かった。
 呼ばれていないのに行くのは大変失礼なことだが、せめて弁解をしたかった。

 クビでも仕方がないが、それぐらいは許して欲しい。
理事長室に行くと私は、ノックする。
 返事があったので深呼吸をして心を落ち着かせた。

「2年1組の担任・椎名です。
どうしてもお話があってお伺いしました」

 心臓がバクバクしている。
恐怖で変な脂汗が出そうだった。怖い……。
 すると優しそうな声が聞こえてきた。

「丁度呼ぼうとしていたところだ。入りなさい」

 えっ……?呼ぼうとしていた……私を?
もしかしてクビを言い渡しにかしら?
 有りえる……父兄からの苦情が来ていそうだし。
恐怖を感じたが言われた通りに理事長室の中に入ることにした。

「失礼します……」

 中に入ると理事長が座っていた。
白髪の高齢者だが物腰の柔らかい感じの人だった。
 理事長は、私を見るなりニコッと笑い座りなさいと言ってきた。