不良も私もスプーンに気を取られた。
 その瞬間を狙ったかのように鬼龍院さんが掴んでいた不良を殴りつけた。殴られた不良は、倒れてしまった。
 クラス中が悲鳴があがる。

「き、鬼龍院さ……ん!?」

「何するんだ!?てめぇー!!」

別の2人が殴りかかろうとしてきた。
 だが鬼龍院さんは、1人避けると腹を殴り、そしてもう1人には、体勢を変えて回し蹴りする。

 あっという間に3人を倒してしまった。
圧倒的の強さを見せつけていた。だがそれだけでは終わらない。
 キレた鬼龍院さんは、踞っている1人を蹴り飛ばすと踏みつけた。

 その姿は、ヤクザの若頭と相応しいぐらいに冷酷で黒いオーラを漂わしていた。
 あのホテルのレストランの時と同じだ。
ゾクッと全身が震え上がった。クラスも全員静まり返った。

「大切な文化祭を潰したあげく、俺の大切な人に手を出そうとするとは……いい度胸だ。
 それは、俺に対する……いや鬼龍院組若頭としての宣戦布告でいいんだな?」

ギロッと睨み付ける。
 残りの不良や倒された不良も怯えたように逃げ出してしまった。
 しかし静まり返ったクラスは、ざわつきだした。
廊下では他の生徒達まで見ていた。
 あれだけ騒ぎを起こしたのだから当然だが。

「えっ?何あれ……あの人ってヤクザなの?」

「ねぇ……他の先生呼んだ方が良くない?」

 まずい……このままだと誤解どころか大事になってしまう。どうにかしなくちゃあ……。
 しかし騒ぎは大きくなるばかりだった。
警備員の人まで来てしまった。

「ちょっと……君。こちらに来てもらおうか!?」

「ちょっと待って下さい。
この人は、私を庇ってくれただけで何も悪くないんです!!」

 警備員は、鬼龍院さんを連れて行こうとする。
私は、慌てて事情を話して止めようとした。
 すると鬼龍院さんは、私を見るとニコッと微笑んできた。

「僕なら大丈夫。ちょっと行ってくる。
すまない。文化祭をめちゃくちゃにして……」