「えっ?上紗さん……どうして!?」
まさか来るとは、思わなかったのだろう。
えっと……どうしたらいいのだろうか?
恥ずかしさと後ろめたさで反応に困ってしまった。
「若。勝手なことをして申し訳ありません。
事情を話して来て頂きました」
重勝さんは、頭を下げながらそう言うと鬼龍院さんは、戸惑った表情をしていた。
「あの……急に来てすみません」
私は、カバンをギュッと握りしめながら必死に告げた。
不安そうに見ると鬼龍院さんは、ぎこちなく微笑むと
「どうぞ。中に……」と言ってくれた。
本当に入ってもいいのかしら……?
私は、小さく頷くと恐る恐る中に入った。
重勝さんは、遠慮して席を外してくれた。
2人きりだ……。何だか気まずい雰囲気が流れる。
な、何か話さなくちゃあ……。
そう思っていると鬼龍院さんは、少し困った表情で笑ってきた。
「すまない……こんな格好で。
上紗さんには、みっともないところばかり見せてるね。
本当は、もっと当主らしくしないといけないのに情けないよね」
その表情は、元気なさそうで、いつもより儚げで寂しそうに見えた。傷ついているのが分かる。
胸がズキッと痛んだ。
やっぱりダメだ。間違っているのかしれないけど
私は、彼を放っておけないと思った。
守りたいとさえ思った。
「情けなくありません!!」
「……えっ?」
「鬼龍院さんは、情けなくありません。
重勝さんから事情は全部聞きました!
確かに凄く怖かったし、悩んだりもしたけど
鬼龍院さんの優しさとか真面目さとか私は知ってます。
組のために頑張っている人を無下にしたくありません!!」
自分でも何を言っているんだと思う。
でも言わないといけない気がした。
伝えないといけない気がした……。