「お待ちしていました。
 鬼龍院組で葵様の世話係と護衛をしている重勝(しげかつ)と言います」

 丁重に頭を下げて自己紹介をしてきた。
鬼龍院組で……葵って鬼龍院さんの!?
 そういえばあの時もそばに居たような気がするわ。

「私に……何の用ですか?」

 少し警戒をしながらそう言うと重勝って人は、頭を上げると少し寂しそうな表情で私を見てきた。

「葵様……いや若について話があります」

鬼龍院さんについて?
 私は、動揺する。しかし内容が、どうしても気になるため近くの喫茶店で話を聞くことにした。
 お店に入りコーヒーを頼むと重勝さんは、重たい口を開いた。

「先日のことは、申し訳なかったと思っています。
大切なデートをぶち壊したり」

「あ、いえ……それはもういいんです。
怪我もありませんでしたし」

「いや……私らの力不足です。
 もっと早く気づいていたら、騒ぎにならなかったかもしれないのに。
 上紗さんに怖い思いをさせてしまった。
そのせいで……鬼龍院さんに対して怖い印象を持たれたことでしょう……」

 重勝さんの言葉にドキッとした。
気づかれていたのかもしれない……自分の気持ちに。
 私は、言葉に詰まった。

「それは、無理もないことです。
一般人が拳銃なんて向けられたら怖いはずです。
 それに対してヤクザにいい印象を持たれないのは、当然のことです。
 若も……大変申し訳なかったとおっしゃっていました」

鬼龍院さんが……!?
 今、何をしているのだろうか?
私のことをどう感じているのだろうか。

「鬼龍院さんは……?」

「それが……大変落ち込まれていまして」

 重勝さんは、言いにくそうに答える。
その言葉に私は、唖然とした。
 落ち込んでいる……鬼龍院さんが?